最新記事

東京五輪

元男性が女子の重量挙げに出るのは不公平じゃないの? 五輪史上初のトランスジェンダー選手にくすぶる批判

Who Is Laurel Hubbard? Weightlifter and First Olympic Transgender Athlete

2021年8月2日(月)15時36分
サマンサ・ロック

IOCは2015年、テストステロンの血中濃度が一定レベルより低ければ、トランスジェンダー選手でも女子として競技に出られるように規則を改正した。

ハバードはIOCの定めた基準を全てクリアしているが、それでも五輪への参加には批判も聞かれる。

最近ではNFL(全米プロフットボールリーグ)のスター選手だったブレット・ファーブが、ハバードの出場に異議を唱えた。ファーブは7月、ポッドキャストの番組で「男が女として競技していることになる」と語った。

「それはアンフェアだ。たとえその人が女性になりたいとか、(性移行を)せずにはいられないと感じているとしても、男がやるのはフェアじゃない。別の性別になりたいということ自体は構わない。私もそれに対して異議はない。だが競技に出るのはダメだ。男性が女性と戦うのはダメだ」

「もし私が本物の女性で――変な言い方だけれど――重量挙げの試合に出てこの人に負けたら、逆上するだろう」

ベルギー代表として東京五輪に出場する同じ87キロ超級の重量挙げ選手アンナ・ファンベリンヘンは5月、こう述べた。

「高いレベルで重量挙げの練習をしてきた人なら誰でも骨身に染みて分かっているはずだ。この特殊な状況は、競技に対しても選手に対してもアンフェアだ」

「自分らしく生きたいだけ」

またファンベリンヘンはこうも述べた。「(ハバードが出場するせいで)メダルや五輪出場など人生の大きなチャンスを失う選手もいるというのに、私たちは無力だ」

2017年12月のインタビューでハバードはこう述べた。「目の前の課題に集中するしかない。そうしていれば道は開けるだろう。誰もが私を支持してくれるわけでないのは承知している。それでも心を閉ざさずに、もっと広い文脈で私の競技を見ていただきたいと思っている」

「私にできるのは、自分自身であること、自分らしく行動することだけだ。もし人々が(そこから)インスピレーションを見つけてくれれば素晴らしいけれど、それを目指しているわけではない」とハバードは述べた。「私は私。私は世界を変えるためにここにいるのではない。ただ自分自身でありたいし、私らしく行動したいと思っている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中