「一度壊れると元には戻らない」 コロナに打ち勝つ免疫力にも関わる『最重要臓器』とは
しかし、肺胞が壊れるなど肺が弱っていると、肺胞から取り込める酸素量が減ります。これを脳は酸素を運ぶ血液が不足していると認識し、心臓にもっと血液を送るように命じます。すると、心臓や血管に負担がかかり、肺以外の部位に疾患が発生してしまう危険性があります。
つまり肺は、単に酸素と二酸化炭素を交換するだけの場所ではなく、心臓や全身の血管の健康とも深く関わっているということです。
これまで多くの方が残念ながら肺の状態に無関心でした。じつは肺は20代から衰え始め、とくに喫煙者は40代になると急速に機能低下が進行します。そして残念ながら、重要な役割を果たしている肺胞は、一度壊れるともとには戻らないのです。
年間9万5000人が肺炎で命を落としている現実
肺の機能が衰えると、私たちにどんな不調が降りかかってくるのでしょうか。
真っ先にダメージを受けるのが、免疫システムです。健康な人の呼吸器には、体に有害な物質から体を守る防御システムが備わっています。
「綿毛」は1分間に1000回を超える速さで動いており、気管内部を覆っている粘膜層を動かします。この働きによって、ウイルスなどの病原体が侵入してきても、粘膜層が捕獲し、捕らえられた病原体は咳とともに口に戻され、食道に飲み込まれる仕組みがあります。
ほかにも肺胞の表面に待機する免疫細胞による迎撃や、血液中を巡回している別の免疫細胞を呼び寄せ、徒労を組んで病原体を撃退する免疫システムも肺は備えています。
これらの免疫システムが肺の衰えによって機能しなくなると、感染症が重症化する危険性が出てきます。
また、肺の病気といえば代表的なのは肺炎ですが、じつは年間約9万5000人もの方が、肺炎によって命を落としてしまっていることをご存知でしょうか?
肺炎とは、気管支や肺に炎症を起こし、肺の病態が著しく低下した状態を指します。ウイルスが原因によるものや、肺胞を包んでいる間質という組織が炎症を起こして発症するものなど、肺炎と一口で言っても原因は様々です。
呼吸筋を鍛える"肺トレ"
このなかで、最近注目されているのが間質性肺炎という病気です。
間質性肺炎はウイルス感染などの急性の場合をのぞき、1年以上の時間をかけてゆっくりと進行していきます。
はじめは階段や坂道をのぼるときに息切れする程度ですが、病気が進行すると服を脱いだり、入浴したりといった日常動作で、痛みを伴う咳が出るようになります。
そしてそのまま放置しておくとやがて重篤化し、命を落とすケースが非常に多いです。
では、肺の機能の衰えは、あきらめるしかないのでしょうか?
答えは、否です。
肺の機能は何歳になっても高めることができます。