最新記事

座談会

池内恵、細谷雄一、待鳥聡史が語り合った「山崎正和論」〈1周忌〉

2021年8月19日(木)14時35分
アステイオン編集委員会
池内恵・東京大学教授、細谷雄一・慶応義塾大学教授、待鳥聡史・京都大学教授

Zoomで行われた放送「安倍政権後の政治改革論」より、池内恵・東京大学教授、待鳥聡史・京都大学教授、細谷雄一・慶応義塾大学教授(左上から時計回りに) 国際政治チャンネル

<日本を代表する知識人・山崎正和が2020年8月19日にこの世を去り、1年がたった。池内恵・東京大学教授、細谷雄一・慶応義塾大学教授、待鳥聡史・京都大学教授という70年代生まれの論客が語り合った、山崎正和との出会いと思い出を再録する>

※座談会は2020年8月28日放送の「国際政治チャンネル」より。本稿は『別冊アステイオン それぞれの山崎正和』(CCCメディアハウス)所収。

「文学便覧」の人

■池内 山崎先生は私たちの共通の、何と言うんでしょうね?

■細谷 「メンター」じゃないですか?

■池内 私たち3人にとって山崎先生は、弟子とか上司とか、そういう関係ではなかったのですが、仕事上でも非常にお世話になっています。

山崎さんの最初の有名な著作は60年代の初頭ぐらいで、我々の中高時代に「文学便覧」や試験問題で名前を見る人でした。その後、大学、大学院へと進み、さらに、本を書いたりしていると、サントリー文化財団の研究会に呼ばれたりして、そこに参加すると、山崎さんが現れるわけです。

高校時代に大昔の作品の著者だった人がぴんぴんとしていて目の前に元気に現れて、「君の本はよかったね」とか言ってくれる。これは不思議な体験ですよね。

また、その話が非常に面白く、一緒に話をすると私たちが活性化され、先生ももっと元気になっていくという関係を20年ぐらい体験させてもらってきました。

そして山崎先生と言えば、やはり「社交」です。学術というよりも「学芸」、それがサントリー学芸賞ですよね。私たち3人が長い間編集委員をやってきた『アステイオン』の書き手や編集委員の多くはサントリー学芸賞の受賞者です。

毎年受賞者がいるので、その集団が『アステイオン』やサントリー文化財団の様々な研究会でつながっています。そのコミュニティ、つまり社交の場をゼロから生み出したのが山崎さんですが、皆さんにとってはどうだったでしょうか?

■細谷 山崎先生を一言で説明をするのはとても難しいですね......。新聞などでは「戦後最大の知識人で巨人」とか、「論壇で最も重要な役割を担った、戦後日本を象徴する知識人」など様々な賛辞がありましたけども、「専門」という言葉も似合わないし、思想的な立場、イデオロギーも一言で説明できない。

1960年代、論壇が一番華やかな時代において中枢にいて、しかし権力ともある独特の距離感を取りながら、一定程度の関与もしている。そういった意味ではとても不思議な存在ですよね。

関西にいらっしゃる待鳥さんがこの3人の中で会った回数、時間が一番多いのではないかと思いますが、どうでしょうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中