最新記事

ドキュメント 癌からの生還

最先端!がんセンター東病院トップが明かす「若者」「バカ者」「よそ者」な医師たち

2021年7月21日(水)11時50分
金田信一郎(ジャーナリスト)

──緩和ケア病棟や世界2番目の陽子線治療センターが話題となりました。病棟も最新の建築でした。

がん患者が増えてきて、がんが国民病になるのは目に見えていました。それで、もう一つがんセンターをつくるという話が盛り上がってきたのだと思います。

──当時、築地にも肺がんや肝臓がんの診療科もあった。

そうですね。

──では、議論が沸きますね。

ここの3分の1は築地(がんセンター中央病院)出身で、あとの3分の1は松戸療養所、3分の1は柏病院の出身者でした。

私は田舎の病院に戻っていましたが、消化器がんの化学療法をやっていたから、「柏に第2のがんセンターができるから来い」と築地時代の元上司に言われて赴任しました。最初は役割分担として、「手術ができる患者さんは築地に紹介して、手術ができない進行したがん患者さんを柏で診る」と言われていました。

開院前の建築中の病院を見に来て、びっくりしました。30年前、この辺りは藪だらけです。当時、勤務していた(福島県)いわき市よりも田舎で、「こんなところに来るのか」と思いました。

──1992年から建物は変わってないわけですよね。

そうですね。隣の東大も柏の葉公園も、まだできていませんでした。ところが、東病院がオープンすると、患者が押し寄せてきたのです。築地にはなかった緩和ケア病棟がありましたし、陽子線治療も国内で最初に実施していました。この2つが目玉で、がん患者さんが押し寄せてきました。そうなると、肺がんと肝臓がんだけでなく、胃がんや大腸がんの患者さんも多いから、だんだんと東病院でも手術をするようになっていきました。でも、メーンは肺と消化器、頭頸部のがんなどでした。

その後、希少がんにも取り組んできましたが、いつも国からは、「がんセンターは2つ必要なのか」と問われました。

──すみ分けですね。

開院して10年ぐらいしたところで、国から「機能分担を明確に」と言われて、当時の幹部の先生方の協議で、築地は「がん対策情報センター」を置いて、柏の方は「臨床開発センター」を置くことになったと聞いています。築地は政策医療、柏は新しい開発を中心に据える方向性になりました。

──新しいことを始めるのが得意だった。

この病院は開院した当時、医師の平均年齢が33歳でした。ちょうど私もそのくらいの年齢でした。今から考えれば、レジデントクラスの年齢です。病院も小さく、診療科横断的な良い雰囲気はずっと続いてますね。

私は内科ですけど、外科であれ、放射線科であれ、簡単に話ができます。金田さんが受けられた放射線治療も、内科で説明をして、外科でも説明を聞いて、患者さんにどちらがいいか決めてもらう。それを最初の頃に始めたのが、この病院です。協力し合ってきました。

──私のケースでは、最初は外科手術をする予定だったのですが、内科の先生が間に入って「放射線もありですよ」という話になって、そのリスクも聞いて決めました。で、思ったんですけど、患者と内科、外科、放射線科が同じ場に一緒に集まって話すことはできないんですね。

時間が合えばできると思いますが、単純に、医者たちが一緒に集まる時間をつくるのが大変だという課題があると思います。

──時間が合えば、そういうこともあるんですか。

それはできると思いますよ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏銀行、資金調達の市場依存が危機時にリスク=

ビジネス

欧州の銀行、前例のないリスクに備えを ECB警告

ビジネス

ブラジル、仮想通貨の国際決済に課税検討=関係筋

ビジネス

投資家がリスク選好強める、現金は「売りシグナル」点
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中