最新記事

教育

世界で最低レベルの、日本の教員の院卒比率

2021年7月7日(水)14時45分
舞田敏彦(教育社会学者)
クラスの教師と生徒

アメリカ、韓国、ドイツでは学校長の院卒率が極めて高い Drazen Zigic/iStock.

<日本の学校では、いったん就職すると膨大な業務に忙殺されて学び続けることができない>

2012年の中央教育審議会の答申で、教員の資格要件を大学院卒に引き上げようという案が示された。教員の資質能力の向上が表向きの理由だが、「今は保護者の多くが大卒なので、教員の学歴を一段高くする必要がある」という考えもあってのことだろう。

当時から10年ほど経ったが、現時点では実現を見ていない。大学院まで行くとなると、在学期間の延長により学費が上昇し、教員志望者が減ってしまう恐れがある。教育実習を1年間にするというのも、現場の負担を考えると現実的ではない。こういう事情もあって、学部から大学院までを見越した教員養成カリキュラムは構想にとどまっている。

日本の教員を見ると、大学院を出ている人はわずかしかいない。IEAの国際学力調査「TIMSS 2019」によると、小学校教員の院卒率は5%、小学校校長では13%となっている。国際調査なので他国との比較もできるが、主要国との比較グラフにすると<図1>のようになる。

data210707-chart01.jpg

海外では、大学院を出ている教員の比率が日本よりずっと高い。韓国とアメリカでは、校長の9割以上が大学院を出ている。管理職になるにあたって、修士ないしは博士の学位が求められるのだろう。ドイツとフィンランドでは、一般教員もほとんどが大学院卒だ。大学院修士課程まで教員養成カリキュラムに組み込まれているので、おのずとこうなる。

以上は7カ国のデータだが、「TIMSS 2019」の対象の59カ国の中では、日本はどのような位置になるか。横軸に一般教員、縦軸に校長の院卒率をとった座標上に、各国のドットを配置したグラフにしてみる<図2>。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

焦点:中国、トランプ関税対応の人民元安容認は小幅か

ワールド

中国、トランプ氏復帰に期待と不安 関係安定へ副主席

ワールド

トランプ氏、きょう米大統領就任式 新たな激動の時代

ビジネス

オリックス、再エネの持ち分法適用会社売却 次世代エ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 7
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 8
    メーガン妃とヘンリー王子の「山火事見物」に大ブー…
  • 9
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 10
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 9
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中