最新記事

ジェフ・ベゾス

地球帰還のベゾス氏、空気を読まない発言に怒りが集中「アマゾン顧客と従業員、君たちが代金を払った」

2021年7月27日(火)17時15分
青葉やまと

新たな火種まいたジェフ・ベゾス氏 REUTERS/Joe Skipper

<租税回避と劣悪な労働条件が問題視されるなか、空気を読まないコメントに怒りが集中している>

Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏は20日、かねてから予告していた宇宙旅行を無事に完了した。ベゾス氏は民間宇宙開発企業のブルー・オリジン社を立ち上げており、今回の飛行は同社が製造した弾道飛行ロケット「ニュー・シェパード」によって実現した。

ニュー・シェパードはテキサス州の発射拠点から打ち上げられ、ベゾス氏と同乗者ら計4人が搭乗したカプセルが発射から約2分後に切り離された。カプセルは引き続き上昇を続け、ベゾス氏を海抜高度100キロ付近まで運んだ。この高度は大気圏と宇宙空間を隔てる「カーマン・ライン」が設定されており、宇宙のはじまりと認められる高さだ。

搭乗者たちは約3分間という束の間の無重力状態を楽しんだのち、テキサス州内の砂漠地帯へと帰還している。飛行時間は合計で約10分間だった。同じく富豪で英ヴァージン・グループ創業者のリチャード・ブランソン氏に9日差で先を越されたものの、無事に宇宙旅行を完遂した形だ。

しかし、一大プロジェクトの成功は、ベゾス氏自身の謝辞によって後味の悪い幕引きを迎えることとなる。着陸後に取材に応じたベゾス氏は、ブルー・オリジン社のスタッフと発射場の地元に感謝の言葉を述べたうえで、「Amazonのすべての従業員と、Amazonのすべての顧客にも感謝したい。なぜなら君たちがこのすべての代金を支払ったのだから」と発言した。このコメントが波紋を拡げている。

・参考動画:問題の発言は1分10秒ごろから

You guys paid for all this': Jeff Bezos thanks Amazon staff, customers

不満再燃の事態に 「脱税の記念碑」「富豪の遊び場」

ベゾス氏はここ数年間、個人で所有するAmazon株のなかから年に10億ドル相当を売却し、ブルー・オリジン社の運営資金に充ててきた。前述の発言には資金源を支えたAmazonの従業員と利用者に謝意を示す意図があるとみられるが、同社の状況を鑑みれば配慮を欠いていたことは明らかだ。

巨額の利益をあげるAmazonだが、同社の租税回避への風当たりが日増しに強まっているほか、倉庫労働者や所属ドライバーなどを搾取的な労働条件で酷使しているとの問題が指摘されている。米フォーチュン誌は、労働者が食事を摂れなかったりペットボトルへの用足しを迫られたりといった現状を紹介し、年間の離職率が150%に達していると報じている。

発言を受け、複数の議員らが批判の姿勢を明らかにした。米民主党のラシダ・タリーブ下院議員はTwitterで「60年前、私達は一丸となって宇宙に行った。今日の悪趣味な見世物は、脱税と不平等の記念碑である」と非難している。

ヴァージン・グループのリチャード・ブランソン氏と飛行日程が近く、富豪による宇宙旅行が相次いだことも、市民感情の逆撫でにつながったようだ。米ABCニュースは、かつては宇宙飛行が「人類の卓越した技量とアメリカの創意工夫の頂点として敬愛されていた」としたうえで、ここ数週間の出来事によって「超大富豪の数ある遊び場のひとつに過ぎず、足元の地球で連綿と続く根強い不公正を思い出させる存在」に成り下がってしまった、と嘆く。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 6
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 7
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 8
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中