最新記事

コロナ感染

知らぬ間に進むペットのコロナ感染 感染者と同居の猫6割、犬4割が陽性

2021年7月20日(火)17時50分
青葉やまと

ペットへの感染の多くは無症状で気づきにくく、放置で重症化に注意 Andrey Zhuravlev-iStock

<感染者の家庭にいる猫の6割、犬の4割で感染歴が確認されている。カナダ東部・オンタリオ州のゲルフ大学の研究チームが明らかにした>

愛猫や愛犬はかけがえのないパートナーだが、飼い主側が新型コロナウイルスに感染すると、かなりの確率でペットにもうつってしまうようだ。感染者の家庭にいる猫の6割、犬の4割で感染歴が確認されている。カナダ東部・オンタリオ州のゲルフ大学の研究チームが明らかにした。

研究チームは新型コロナウイルスへの感染歴がある人々の協力を得て、各家庭で飼っている猫と犬に対して抗体検査を実施した。現時点での感染状況を調べるPCR検査および抗原検査とは異なり、抗体検査は過去の感染の有無を確認することができる。

48匹の飼い猫を検査したところ、その67%が陽性反応を示す結果となった。およそ3匹に2匹という高い割合で飼い主からコロナがうつっていることになる。犬については猫よりも割合が少なかったものの、54匹のうち43%から陽性反応が得られた。

感染ルートとしては散歩中の外部からの感染などもあり得るが、研究チームは大半が飼い主経由だと考えている。ペット以外の猫と犬についても陽性率を調べたところ、動物保護施設では猫と犬の合算で9%、野良猫・野良犬では3%という低い感染率となった。感染者と同居しているペットに顕著に高い感染率が見られることから、主として人間から感染したものだとチームは推定している。

ペットへの感染の実態を解き明かす

研究はゲルフ大学で獣医病理学を研究するドロシー・ビエンゼル博士が主導し、その成果がこのたび、7月12日までオーストリアとオンラインで開催された第31回ヨーロッパ臨床微生物・感染症学会の場で発表された。サンプルとなったペットは77世帯からの計102匹で、猫と犬がほぼ半々となっている。大規模な調査とはいえないものの、ペットのコロナ感染のリスクを知るうえで一定の参考になりそうだ。

ビエンゼル博士は感染症の専門誌である米インフェクシャス・ディジーズ誌に対し、「周知のとおり、新型コロナウイルス感染症を引き起こすパンデミックは世界規模で起きており、主として人間に影響を及ぼしています。一方でまた、多様な動物の種も感染しており、一定の病気の兆候を見せています。そこで我々は、ペットの抗体陽性率と危険因子について調査したいと考えました」と研究の背景を説明する。

新型コロナウイルスがペットに感染する可能性は以前から指摘されてきたが、実際にどの程度の頻度で発生するかを調べた研究例は多くなかった。今回の調査により、一般的な想定よりも高い割合でうつっていたことが明らかになった。ただし、最近ではオランダの別の研究チームが約17%のペットにのみうつるとの論文を発表しており、研究チーム間でかなり数字に開きがある状態だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米情報機関「中国は最大の脅威」、AIで米凌駕 台湾

ビジネス

NY外為市場=ドル/円軟調、関税導入巡る不透明感で

ビジネス

米国、輸出制限リストに70団体を追加 中国・イラン

ビジネス

米国株式市場=続伸、米関税巡る柔軟姿勢に期待 経済
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 4
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 5
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 6
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 7
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中