最新記事

コロナ感染

知らぬ間に進むペットのコロナ感染 感染者と同居の猫6割、犬4割が陽性

2021年7月20日(火)17時50分
青葉やまと

猫と犬、感染率の差はなぜ?

カナダの研究に話を戻すと、とくに猫を飼っている場合、人間の感染が疑われる場合には長時間の接触を避ける方が良いようだ。抗体検査で陽性となった猫は、飼い主と1日あたり19時間以上の長時間の接触をしている傾向が見られた。

飼い主のベッドで一緒に寝ている場合には、うつしてしまうリスクがとくに高かったという。ビエンゼル博士は「新型コロナで体調が非常に悪く、1日の大半をベッドの上で過ごしているとき、近くにペットがいることで安心感を得られる。これは私たち皆が理解できることだと思います」と述べ、療養中に知らずとペットとの接触が増えてしまうことに理解を示している。

一方で犬では、飼い主と一緒に過ごした時間の長さは感染率に影響しなかった。研究チームは、ペットの体内にウイルスが侵入する足がかりとなる受容体など、生物学的な違いが影響している可能性があると見ている。また、体が比較的大きい犬は人間と顔同士を近づけて眠ることが少ないなど、物理的な大きさも影響している模様だ。

多くは無症状で気づきにくく 放置で重症化に注意

ペットへの新型コロナウイルスの感染は、起きたとしても気づきにくいのが実情だ。飼い主へのアンケート調査によると、感染したペットの大半は無症状であった。陽性だったペットのうち何らかの症状を示していた割合は、猫で27%、犬で20%に留まる。

有症のケースでは、猫では鼻水と呼吸困難、犬では体力の低下と食欲不振が最も多く見られた。猫では3匹が重症化していたのに対し、犬はすべてのケースが中等症までであり治癒も早かった。なお、呼吸系の病気はもともとペットにも多く、これらの症状を示したからといって必ずしも新型コロナにかかっているというわけではない。

感染症学会によるのなかでビエンゼル博士は、「誰かが新型コロナに感染していると、ペットにうつす確率は驚くほど高くなります」と総括する。現時点で確認されている経路は人からペットへの感染のみであり、ペットから人への感染は確認されていない。しかし、博士は「その可能性は完全には排除できません」と述べ、ペットをほかの家庭の人あるいはペットに近づけないよう勧めている。

現在、人間の世界ではワクチン接種が進みつつあるが、ペットはこの恩恵を受けていない。感染リスクの高さが浮き彫りになったいま、人間とペット間、あるいはペット同士のソーシャルディスタンスを意識する必要が出てくるのかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米防衛企業20社などに制裁 台湾への武器売却

ワールド

ナジブ・マレーシア元首相、1MDB汚職事件で全25

ビジネス

タイ中銀、バーツの変動抑制へ「大規模介入」 資本流

ワールド

防衛省、川重を2カ月半指名停止 潜水艦エンジンで検
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中