最新記事

中国

中山服をトップのみが着るのは中国政治の基本:建党100周年大会の構成と習近平演説を解剖

2021年7月3日(土)13時36分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

そして最後に今般の習近平の中山服姿。

endo20210703094806.jpg
CCTV映像からのキャプチャー(2021年7月1日)

このように習近平だけが中山服を着ているが、これは「トップの最高指導者のみが中国伝統のフォーマルな中山服を着る」という、中国政治の基本ルールがあるからだ。

これを「習近平だけが権威付けをしようとしている」などと解説した全ての中国研究者には猛省を求めたい。もっと中国政治の基本を勉強なさった方がいいだろう。さもないと日本の視聴者や読者に、正しい中国分析を提供することができない。それは国益にも国民の利益にも反することにつながるので、注意を喚起したい。

新時代とは何かを明確にした

習近平の演説内容は共産党員網が正確に文字化して報道しているので、そちらを参照した。動画に関しては接続が不安定なので省く。この文章を見る限り「新しい道のり(新的征程)」が10回使われている、「新時代」が8回出てくる。

その言葉の周辺にある文章から読み取ると、これまで何度もコラム(たとえば6月25日のコラム<建党100年、習近平の狙い――毛沢東の「新中国」と習近平の「新時代」>など)で書いてきたように、「新時代」とは「アメリカと拮抗するところまで中国が力を持つようになった時代(中華民族が偉大な復興を成し遂げつつある時代)」のことで、「新段階に入った」という言葉は、式典における青少年たちの合唱のような讃歌の中でも語られている。長くなりすぎるので、ここでは省く。

習近平の鄧小平への復讐

演説の中で習近平の鄧小平への復讐が透けて見える個所がいくつかある。たとえば「以史為鑑」(歴史を以て鑑とする)を 10回も言っており、「初心」も 5回ほど言っているが、建党100年なので、100年の歴史を鑑とするのは当然で、「党の初心を忘れるな」と言うのも当然だろうと切り捨てるわけにはいかない。

拙著『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』で詳述したように、習近平の父・習仲勲は毛沢東の革命根拠地となる「延安」を築いた英雄の一人だ。鄧小平は、毛沢東が習仲勲を高く評価していることを警戒して、冤罪により習仲勲を陥れ、16年間もの長きにわたって投獄・軟禁の月日を強いた。

その間、鄧小平は革命根拠地「延安」の重要性をかき消し、革命の初心を薄めていった。

だから習近平は今、その欠落を埋めるために「初心忘るべからず」を党のスローガンにして、鄧小平を乗り越えようとしているのである。

三、習近平の演説を遮るほどの歓声と拍手喝采に見る「人民の心」

演説の後半になると、習近平の言葉を遮るほどの歓声と拍手喝采が起きた場所が2回もあった。一ヵ所は以下の件である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送米と「駆け引き」なら高関税、トランプ氏警告 最

ワールド

トランプ氏の機密文書持ち出し事件、米地裁が報告書公

ビジネス

インフレと金利は良好な状態、任期全うが基本方針=E

ビジネス

米ハイテク大手4社のAI投資、26年は6500億ド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 3
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面を突き破って侵入する力の正体が明らかに
  • 4
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 5
    ペットとの「別れの時」をどう見極めるべきか...獣医…
  • 6
    揺れるシベリア...戦費の穴埋めは国民に? ロシア中…
  • 7
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 7
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中