最新記事

クーデター

混迷深まるミャンマー スー・チー裁判は長期化、反軍政の武力抵抗は激しさ増す

2021年6月30日(水)21時31分
大塚智彦

市民は座り込みなどで抵抗とスー・チーへの支持を表している UGC-REUTERS

<ミン・アウン・フライン国軍司令官率いる軍政によるクーデターから半年。しかし事態は混迷を深めて──>

2月1日にクーデターで軍政に身柄を拘束され、複数の容疑で訴追、公判が続いているアウン・サン・スー・チー氏の裁判が長期化する可能性が高くなったことが明らかになった。

これはスー・チー氏の弁護を担当するミン・ミン・ソー弁護士、キン・マウン・ゾー弁護士らが明らかにしたもので、反軍政のメディア「ミッジィマ」がAFP電として6月29日に報じた。

23人の追加証人を検察側が申請

弁護団によると、複数の容疑に問われているスー・チー氏の公判で無線機の不法所持や2020年11月の総選挙で十分なコロナ対策を怠った容疑などについては、これまで公判の進展具合から7月末の結審が予想されていた。

ところが6月28日に開かれた公判で検察側が新たに23人もの証人を裁判長に申請したことが分かり、今後この23人の証言が公判で行われる見通しとなり、結審までさらに時間がかかり、裁判が長期化する可能性が極めて高くなったとの見方を弁護団が示した。

首都ネピドーに設けられた特別法廷での28日の公判に出廷したスー・チー氏は、検察側が用意した4人の証人尋問に臨んだ。証人の4人はいずれも検察側の起訴に従い、スー・チー氏に不利な証言を行ったと弁護団は明らかにした。

そして同日の公判で検察側は新たに23人の証人を裁判長に対して申請、今後の公判でこの証人による証言が行われることになった、という。

弁護団のキン・マウン・ゾー弁護士は「この証人の数では検察側としても早期の結審はは望んでいないということだろう」との見方を示し、裁判の長期化への懸念を示した。

これまでに明らかになっているスー・チー氏が問われている容疑は、ミン・ミン・ソー弁護士によると①違法に外国から無線機を輸入した輸出入法違反容疑②2020年11月に実施された総選挙の際に折からのコロナウイルスの感染防止対策を怠った自然管理保護法違反容疑③無許可で無線機を所持していた通信法違反容疑④地方の実業家から55万ドル相当の金塊を受領していた汚職容疑⑤「国民に社会不安を煽った扇動罪」とされている。

裁判長期化で影響力低下狙う

こうした裁判の進め方はクーデターで実権を掌握した軍政の意向が強く反映しているといわれている。

軍政はいまだに国民の人気、支持が高いスー・チー氏の裁判を長期化させることで「早期解放」への道を遠ざけ、国民の反軍政運動への影響力低下を狙っているのは間違いないといえる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、高市首相答弁の撤回要求 日中外務高官協議

ビジネス

高市首相と会談、植田日銀総裁「利上げは今後のデータ

ビジネス

英中銀、投資銀業務分離規制の一部緩和検討か 抜本改

ワールド

経済対策、「しっかり必要な額」求める声多く=自民政
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 9
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中