最新記事

教育

学校の職業教育への評価が、日本で特異的に低い理由

2021年6月30日(水)12時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

教育は人なりというが、専門教育を充実させるには教員集団の組成を変える必要もある。たとえばパート教員の比率、教育職以外の平均経験年数を国ごとに比べるとどうだろう。この2つのマトリクス上に、48の国を配置すると<図2>のようになる。

data210630-chart02.png

日本は2つの指標とも低いので、原点の付近にある。パート教員率は9.8%、教育職以外の平均経験年数は0.8年でしかない。学校と社会の敷居が高いためか、教員の多様性に乏しい。対して右上の南米諸国では教員の半分がパートで、民間経験年数も日本よりずっと長い。これらの国では、教員の仕事の9割は授業だ。

学校は勉強をするところ、社会生活に必要な資質・能力を育むところ。これが原点だ。社会の変化に伴い、学校も原点回帰が求められている。少子高齢化に伴い、学校にも人手不足の波が及んでいる。教師と生徒が全身全霊で触れ合うことによる全人教育など、もはや学校だけでは不可能だ。積極的に学校を開放し、外部社会の助けも借りて、社会全体で子どもを育てる構えが求められる。

そういう分業において、学校は教授・学習活動に専念する。それがどれほどできているかは、専門教育への評価によって知ることができる<図1のグラフ>。日本の低い現状は雇用慣行による部分が大きいが、機能を散漫させている学校の問題であるようにも思う。

<資料:内閣府『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』(2018年)
    OECD「TALIS 2018」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市氏が総裁選公約、対日投資を厳格化 外国人への対

ワールド

カナダとメキシコ、貿易協定強化で結束強化の考え

ワールド

米、ワシントンの犯罪取り締まりで逮捕者らの給付金不

ワールド

フィンランド、米国との二国間の軍事協力は深化=国防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中