最新記事

ミャンマー

【画像】無防備な村を丸ごと焼き討ち、ミャンマー軍の暴虐

Photos Show Smoldering Ruins of Myanmar Town, Burned by Government Troops

2021年6月17日(木)18時21分
ジュリア・マーニン

この村では軍と治安部隊の襲撃に備え、自警団が結成されていた。ミャンマー各地に生まれたこうした自警団の大半は軽装備で、手作りの狩猟用ライフルなどを所有しているだけだ。

国軍の兵士たちが家々の捜索を始めたときには、村には4、5人の住民が残っているだけだった。何も見つからなかったため、兵士たちは家々に火を放ち始めた。

「村の近くには森がいくつかあり、大半の人が森に逃れていた」と、住民は語った。

この住民の話では死傷者は3人で、ヤギ飼いの少年1人が太腿を撃たれたほか、逃げ遅れた高齢の夫婦が殺されたという。ただ、この夫婦を「行方不明」とする情報もあり、生死ははっきりしない。

村に戻る気かと聞くと、この住民は「いや、恐ろしくてとても帰れない」と答えた。

各地の自警団は、ミャンマー民主派が樹立を宣言した「統一政府」の率いる「連邦軍」に加わる意向を表明していて、一部の自警団は、長年分離独立を求めて戦ってきた国境地帯の少数民族の武装勢力と同盟を結んでいる。

これまでは国軍は、西部チン州、北部カチン州、東部カイン(旧称カレン)州など、国境地帯の少数民族の支配地域に派遣され、武装勢力と戦闘を繰り返してきた。

同じビルマ族にも容赦なし

キンマ村の事件が注目を集めたのは、マグウェ管区はミャンマーの支配的な民族であるビルマ族が多数を占める地域であり、国軍がビルマ族の村を襲撃するのは異例のことだからだ。

国軍は2017年、「反乱鎮圧」の名目で、西部ラカイン州のイスラム教徒の少数民族ロヒンギャの村々を襲撃。70万人超の住民が家を追われ、国境を越えてバングラデシュに逃れ、「難民危機」と呼ばれる事態になった。

ミャンマー国内にはロヒンギャに対する偏見が広くはびこっているため、この時には軍の暴虐に抗議の声を上げる人は少なかった。国際司法裁判所はロヒンギャに対する迫害停止の仮処分命令を出したが、ロヒンギャ迫害がジェノサイド(集団虐殺)に該当するか否かについては、今も審理が続いている。

キンマ村の事件を受け、ソーシャルメディアでは、これでミャンマー軍の残虐性を告発したロヒンギャの訴えがさらに説得力を持つとの声も上がっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、近い将来の利下げなお可能 政策「やや引き締

ワールド

米国、和平合意迫るためウクライナに圧力 情報・武器

ビジネス

ユーロ圏の成長は予想上回る、金利水準は適切=ECB

ワールド

米「ゴールデンドーム」計画、政府閉鎖などで大幅遅延
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体制で世界の海洋秩序を塗り替えられる?
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 6
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 7
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中