最新記事

原発

中国の原発で放射線漏れの疑い チェルノブイリを彷彿とさせる透明性の欠如

China's Nuclear Leak Denial Evokes Chernobyl as Plant Insists It's Safe

2021年6月15日(火)15時01分
ジャック・ダットン
台山原子力発電所

台山原子力発電所側は「安全基準を満たしている」と強調 Bobby Yip-REUTERS

<運営に協力している仏企業が米エネルギー省に「差し迫った脅威」を報告するも中国側の運営会社は一切の問題を否定>

中国・広東省にある台山原子力発電所について、アメリカ政府が先週、この原発を部分的に所有・運営するフランスの企業から「放射線物質に関する差し迫った脅威」の警告を受け、放射線漏れの疑いについて評価を行っていたことが分かった。

台山原発を運営する中国広核集団(CGN)は疑惑を否定し、原発内にある複数の原子炉は正常に機能していると主張。だが一連の騒動は、原発をめぐる過去の複数の事故において隠蔽が行われた過去の事例を彷彿とさせる。

CNNが6月13日に報じたところによれば、フランスの原子力企業フラマトムは、米エネルギー省に書簡を送付。この中で、中国の安全規制当局が台山原発の運転停止を回避するために、施設外の放射線量の許容限度を引き上げていると警告し、中国の基準は既にフランスの安全基準を超えていると主張した。同社はアメリカの技術支援を求めた。

フランス電力公社の子会社で、原子炉関連設備の設計・製造およびサービスを手掛けるフラマトムは、台山原発の建設と運転に協力している。

匿名の米当局者がCNNに語ったところによれば、ジョー・バイデン米政権は同原発の状況ついて、まだ「危機レベル」にはないと考えている。

国家安全保障会議を複数回開催

フラマトムの広報担当者は本誌に宛てた声明の中で、「中国・広東省にある台山原子力発電所の性能問題について、解決に向けた支援を行っている」ところだと述べ、こう続けた。「現在入手可能なデータによれば、同原発は安全性評価基準内で稼働している。当社のチームは状況を評価し、起こり得るあらゆる問題に対応する解決策を提案できるように、複数の専門家と協力している」

だがCNNによれば、フラマトムが米エネルギー省に送った6月8日付の書簡には、「同原発にも一般市民にも、放射性物質に関する差し迫った脅威がある。フラマトムとしては同原発を正常運転に復帰させるために、必要な技術データと支援を送る許可を至急要請する」と書かれていた。

また書簡には、中国が引き上げた放射線量の許容限度はフランスの基準を超えているが、それがアメリカの基準を超えるものかどうかは不明だとも書かれていた。

米当局者はCNNに対して、先週は、国家安全保障会議(NSC)が複数回にわたって開かれ、この問題について話し合ったと語った。また複数の情報筋によれば、バイデン政権と米エネルギー省がこの問題についてフランス政府と協議を行い、中国政府とも連絡を取ったということだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪首相、対米輸出の10%の基本税率は今後も続くとの

ビジネス

個人株主数は2024年度に過去最高を更新、11年連

ワールド

キーウに夜通しドローン攻撃、14人負傷 鉄道インフ

ビジネス

トランプ米大統領、4日に関税率通知の書簡送付開始と
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「コメ4200円」は下がるのか? 小泉農水相への農政ト…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 9
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 10
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中