三人っ子政策に中国国民の反応は冷ややか 「二人目さえ欲しくない」理由
China’s Three-Child Policy Won’t Work
都市部では人口増と都市の膨張に伴って、渋滞、環境汚染、インフラの逼迫といった問題も増えている。地方でも労働集約型産業から機械化された製造業などへの移行が進んでおり、子供の多い家庭が得をするとは限らない。
今の状況で子供を3人持つことが奨励されても、強いインセンティブは見当たらない。例えばシンガポールでは出生率を上げるために出産・育児や医療に支援金を出し、子供が3人以上いる家庭に公営住宅入居の優先権を与え、若い母親に対しては税金を優遇している。中国政府も少子化に本気で取り組むなら、子供を3人以上持つ「貴い務め」を果たそうとする国民にもっと報いるべきだろう。
第2に「三人っ子政策」は、女性の人生、権利、利益に配慮を欠いているという批判がある。中国の女性は人口政策の大幅な変更のたびに、貧乏くじを引かされてきた。SNSには、こんな書き込みがあった。「私たち女性の基本的な社会経済的自由を支える政策や保護措置がない限り、仕事を含む将来の計画を危うくしてまで、女性はさらに子供を産もうとは思わない」
女性が貧乏くじを引く
中国企業の最高幹部レベルに女性が占める割合は、経済の開放と自由化が本格化した1990年から着実に低下している。2019年の時点で、上場企業の女性役員の割合は10%程度だ。原因の1つに、成功した女性はいずれ子供をたくさん産むから、企業は育児の負担が少ないと思われる男性を優遇したほうがいいという考えがあった。
多くの国と同じく中国の女性も、仕事か子育てかという選択を迫られる。経済状況が不安定な今は、多くの女性が仕事を選ぶ。
さらに根本的な要因として、中国では個人主義的な傾向が強まり、個人の選択が重視され始めている。いま20~30代の中国女性は前の世代よりも、結婚して子供を産み、仕事を辞めるという伝統的な期待に逆らってきた。
ここに三人っ子政策の大きな誤解が見える。この政策は「女性に子供を産む機会を与える」という趣旨だが、本当の問題は「女性が子供を産みたいかどうか」なのだ。
政府が現実の問題に取り組むには、育児関連のコストと弊害を大幅に削減してフルタイムの女性労働者の負担を軽減するとともに、家事の平等な分担を推進する必要がある。「女性は天の半分を支える」と毛沢東は言ったが、実際には女性は育児負担の大部分を背負っている。