ビットコイン相場で話題の「マイニング(採掘)」って何?

2021年6月3日(木)17時10分
高山武士(ニッセイ基礎研究所)

具体的に、執筆時点でのビットコインのブロック作成の閾値を見てみよう。


【ブロックヘッダハッシュの閾値(Target)】(以下2進数・16進数・10進数の3種類で標記しているがすべて同じ数値) 「10110011110011101001000000000000000000000000000000000000000000000000 000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000 0000000000000000000000000000000000000000000」(2進数) 「b3ce90000000000000000000000000000000000000000」(16進数) 「1076379879376199359324913638762382564863378102643851264」(10進数)

これだけ見ると、閾値も大きな数に思えるが、ハッシュ値がとりうる数と比較するとかなり小さい数であることが分かる。

例えば、2進数でみると閾値の桁数は(上記枠内の桁数は目で数えるのは大変だが)180桁となっている。ハッシュ値の総桁数は(2進数で)256桁なので、ランダムにハッシュが生成されたとして、256桁のハッシュがおおよその閾値である180桁より小さい数値になれば"当たり"といえる。

この可能性を256桁のすべての(2進数の)数字のうち先頭76桁がゼロとなる数字が見つかる割合とみなせば、確率的に1/276≒1.32×10-23となる18。また、この逆数は7.56×1022となる。

つまり、現在"当たり"の「ナンス」を探すには、おおよそ7.56×1022回のハッシュ計算(発掘作業)が必要となっていることが分かる19。10分間(600秒)で"当たり"の「ナンス」が発見されるように難易度は調整されるので、1秒当たりでおおよそ1.26×1020のハッシュ計算(発掘作業)が行われていることになる20。

この1秒当たりの計算量はハッシュレート(Hash Rate)と呼ばれ1012を表す単位T(テラ)や1015を表す単位P(ペタ)、1018を表す単位E(エクサ)を使い、たとえば126EH/s(エクサハッシュ毎秒)などと表される。実際の「マイニング」に利用されている計算量は、図表6の通り激増している21。筆者の7年前のパソコンでは起動できたとしても、おそらく"当たり"のナンスは発見できないだろうし、宝くじを買って"当たる"可能性の方が高そうだと思える程度に"当たり"は少ない(しかし、誰かが約10分に一度"当てている"のも確かである)。

-----
18 2進数では各桁はゼロか1の2通り取り得るが、先頭76桁がすべてゼロである必要があるため1/278となる。約100垓(京の1つ上の単位)分の1である。閾値がキリの良い数値でないため、例えば先頭76桁がすべてゼロでもその後の2桁が11だと閾値を超えてしまうが、そのあたりは捨象している。

19 276≒7.56×1022("当たり"の「ナンス」を探すために必要な計算量)

20 1.26×1020×600(秒)=7.64×1022

21 図表6で示したハッシュレートは直近で約145EH/sであり、本文中の必要ハッシュレートよりやや大きいのは途中の確率を計算する際に捨象した部分があるためと思われる(脚注18参照)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中