ビットコイン相場で話題の「マイニング(採掘)」って何?

2021年6月3日(木)17時10分
高山武士(ニッセイ基礎研究所)

なお、ビットコインはプルーフオブワーク(端的に言ってしまえば、計算力≒電力による承認)を採用したブロックチェーンの例であるが、プルーフオブワークではない承認の仕組みを採用するブロックチェーンもある点は補足しておきたい(電力以外の「証拠」で耐改ざん性を担保しようという仕組みといえる)。必ずしも、ブロックチェーンとプルーフオブワークはセットではなく、また、一部の暗号資産では既存のプルーフオブワークという仕組みから転換しようという動きもあるようだ25。

一方、上述の通り、電力が「耐改ざん性」を高め、信頼性につながるのであれば既存のプルーフオブワークも有用であるという考え方もできるだろうし、気候変動を危惧する視点からはクリーンな電力での発掘なら許せるという立場もあるかもしれない。どの仕組みが「良い」のかは結局、人間により判断されるのであり、将来的に生き残っていく暗号資産が結果として人間にとって「良い」と判断された仕組みということになるのかもしれない。

ビットコインのような(分散型であるため、自律的で耐障害性にも優れている)システムの仕組みを(例えばプルーフオブワークから違うものに)変更するには、すべてのネットワーク参加者が使うシステムを変更する必要があるだろう。暗号資産のシステム保守や管理を行っているコミュニティはこうした力を保有している可能性があり、政治的その他の力を使うことで、システム利用を停止することなどもできるかもしれない。こうしたシステム自体が将来的に変更されていく可能性もゼロとは言い切れない(だだし、すべてのシステムを変更する可能性について言及してしまうと"何でもあり"ということになってしまう)。

本コラムでは脚注で触れるにとどめたが、ビットコインはその発行量が決まっている(金のように希少性がある)といった性質なども後押しする形で、これまで需要は増加する一方であった26。現在でもビットコインに対する需要は高く、最近もETFの組成が検討されているなど、投資対象としての魅力を高めていることに鑑みれば、今後も当面は高い需要が維持されるように思われる。

ビットコインはその価格変動の大きさや、気候変動への関心の高まりにより、最近、多くの報道を目にするようになった。またNFT(非代替トークン)などの関連技術に関する報道も多くなっているように思う。今後も、こうした技術の動向に注目して行きたい。

-----
24 「ビットコインの電力消費量、多くの国々を超える水準に」Forbes JAPAN(2021/05/12)

25 例えば「ブロックチェーンによるエネルギーの大量消費を解消できるか:動き出したイーサリアムと「PoS」の潜在力」WIRED(2021.03.30)など

26 ビットコインの希少性や経済的な観点からの考察は、例えば、櫨浩一(2018)「仮想通貨と経済~ビットコインを中心として~」『基礎研レポート』2018-03-30を参照。


[執筆者]
高山 武士 (たかやま たけし)
ニッセイ基礎研究所
経済研究部准主任研究員

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本の小説36
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月16日/23日号(9月9日発売)は「世界が尊敬する日本の小説36」特集。優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-米、ロ産石油輸入巡り対中関税課さず 欧州の行

ワールド

米中、TikTok巡り枠組み合意 首脳が19日の電

ワールド

イスラエルのガザ市攻撃「居住できなくする目的」、国

ワールド

米英、100億ドル超の経済協定発表へ トランプ氏訪
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中