無計画な植林が環境を破壊している 侵略種化や8割衰弱も
植林から外来種の侵略が起きていた
植林の失敗はなにも日英に限ったものではなく、世界各地で繰り返されてきた。環境問題に特化したニュース・サイトの『モンガ・ベイ』は、スリランカでの事例を紹介している。過去に行われたマングローブの植林プロジェクトを評価したところ、事業対象のうち約4割の現場で、植えた樹木が全滅していた。面積別では全1000ヘクタールのうち8割が衰弱し、健全なマングローブの生態系が根づいたのは2割に過ぎなかったという。研究者たちは、大部分がマングローブの生育に不適切な土壌だったと指摘している。
南アフリカに目を移せば、19世紀に植えられた外来種のオーストラリア産アカシアが、侵略的な勢いで繁栄している。今ではその伐採に毎年大金が投じられている状態だ。顛末を紹介するガーディアン紙は、「不適切な木を不適切な場所に植えると、害がメリットを圧倒的に上回り、人々と自然のためにならないばかりか炭素の吸収も果たせない」と述べている。
自然林を蘇らせる手法が評価されている
このように植林は、既存生態系の破壊や外来植物の拡大に加え、農地縮小のジレンマや維持の難しさなど、多くの問題を潜在的に抱えている。善意の植林を責めるべきではないが、より実効的な手法が求められているのも確かだ。ガーディアン紙はオリジナルの植生を十分に考慮した植林が望ましいとしており、そうした方向での植林継続も一案になるだろう。
このところの傾向としては、自然界の回復能力を引き出す手法が注目を浴びている。人工的に木を植えるのではなく、土地本来の植生が再び活力を取り戻せるよう、人の手で最小限の手助けをするスタンスだ。BBCは、スコットランドで鹿を駆除することにより森林を再生させた成功例や、ルワンダでシダ植物を除去することで森の活力を蘇らせた事例を紹介している。
土地本来の状態に近い植物相が回復する可能性があり、生育に適した環境と合致することから、炭素の蓄積効率が高まるのではないかと期待されている。イギリスのキュー王立植物園の研究者たちが発表した論文によると、自然林を再生させた場合の炭素の吸収速度は、植林に比べて最大で40倍に達する可能性があるという。
難点としては、植林のように整然とした森林には仕上がらないため、美観が重視される市街地には向かないだろう。しかし、樹木本来の再生力に委ねることから維持管理コストが低く、予算あたりさらに多くの面積を緑化できるメリットがある。環境意識がますます高まるにつれ、植林に代わって自然林の再生が検討される機会が増えてゆくのかもしれない。