最新記事

教育

「宿題なし・定期テストなし」でも生徒が勝手に勉強する公立中学校の『肯定感の育て方』

2021年6月10日(木)18時05分
工藤 勇一(横浜創英中学・高等学校校長) *PRESIDENT Onlineからの転載

成長したくない子供なんて一人もいません。最初は麹町中の教員も保護者の方も、「宿題も定期テストも廃止して子供に任せる」という方針を聞いて、不安だったようです。それでも最終的には子供自身が自分で決めることのメリットを見いだしていったのです。

「給食当番はボランティア」生徒発案が大成功したワケ

ルール作りといえば、麹町中でのおもしろい事例があります。あるとき、給食委員会の生徒が「給食当番はボランティアでいいんじゃない?」と言い出したんです。それまではクラス全員が順番に担当していたのですが、やる気のない当番の場合、給食の準備が遅くなり、昼休みが短くなってしまうことがありました。それならば"昼休みを確保するために自分がやりたい"という人を募ってみようということになったのです。

結果はというと、希望者は集まり、当番業務も円滑に回り、全員にとって良い結果になりました。

自分たちで考えた方法がうまくいったときの充実感は、何物にも代えられません。こうした経験を経ることで、子供は自分の周りにある課題を見つけ、自分で解決策を見いだせるようになっていきます。

図表:過保護と自己決定のメカニズム

子供に決めさせず、大人が与え続けていくと、子供は自分がうまくいかないことさえ他人のせいにするようになってしまいます。

たとえば、朝、毎日起こしていたら、寝坊して遅刻した際に文句を言われた経験はありませんか? 寝坊した自分が悪いのではなく、親が7時に起こさなかったからだと不満を言うようになるのです。

子供にルール作りを任せるといっても、最初は親のサポートが必要なケースも多いと思います。忘れ物が多かったり、朝起きられなかったりなど、子供がうまくいっていないタイミングで「どうしたの?」と質問し、対話しながらルール作りのサポートをしてやってください。

子供が具体的な内容を考えつかないときは、親が一緒に考えながら具体例を示し、そこから選択させてもよいと思います。

さらに、子供の考えたルールが期待外れなものでも「勝手にしなさい」とは言わないことです。「任せる」と「見放す」はまったく別の行為です。それに、もしそのルールで子供が失敗したら、そのときこそチャンスです。

なぜ失敗したのか、次はどう工夫すればいいのかを話し合うことは子供にとって大きな学びの機会になるでしょう。

子供に失敗をさせたくないと思う気持ちはわかります。しかし、試行錯誤をしながら前に進んでいく喜びは誰のものでもなく、子供自身のものなのだと理解しておきましょう。

A:ルールを子供自身に考えさせて

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 4
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中