最新記事

コロナワクチン

米ワクチンを潰すため、西側インフルエンサーを買収していたロシア

Influencers Claim Agency With Russian Connections Offered Cash to Discredit Pfizer Vaccine

2021年5月26日(水)18時52分
ナタリー・コラロッシ
ロシア工作員(イメージ)

ロシア工作員の囁きはどんな情報に隠されているかわからない Pict Rider-iStock

<ロシアと関係するとみられる代理店が、「ファイザー製ワクチンは危ない」とするニセ情報の拡散を依頼していた>

米動画投稿サイト「ユーチューブ」で、情報を発信しているフランスとドイツのインフルエンサー数名が、ロシアと関係があるらしいPR代理店から奇妙な取引をもちかけられたことを明かした。金と引き換えに、米ファイザーとドイツのビオンテックが共同開発した新型コロナウイルスワクチンの信用を落とすために、ワクチン接種で死者が何百人も出たという偽の情報をフォロワーに伝えるよう頼まれたという。

複数のユーチューバーがこの代理店からのメールのスクリーンショットをネット上に投稿した。その画像によれば、依頼したPR代理店はファジー(Fazze)と名乗る、ロンドンを拠点とする「インフルエンサー・マーケティング・プラットフォーム」らしい。

ガーディアン紙によると、ファジーは先日、健康と科学をテーマに動画を配信しているフランスのユーチューバー数名に接触し、「ファイザー製ワクチンを接種した人の死亡率は、アストラゼネカ製ワクチンの接種を受けた人よりほぼ3倍多い、と説明してほしい」と頼んだ。

ユーチューブやインスタグラムやTikTokにニセ情報を掲載する際、情報を裏付けるデータが含まれたレポートへのリンクを張ることも条件だった。リンク先は仏ルモンド紙の記事やソーシャルニュースサイトのレディット、エシカル・ハッカーのウェブサイトに投稿されたレポートなどだった。

標的はファイザー

リンク先のルモンド紙の記事の内容は、欧州医薬品庁(EMA)からロシアのハッカーによって盗まれたと言われるファイザー製ワクチンのデータに関するもの。他のリンク先のレポートは削除されたと、ガーディアン紙は報じている。

ファジーはインフルエンサーらに「一部の政府が国民の健康に害を与えるファイザー製ワクチンを積極的に購入しているのはなぜなのか」をフォロワーに尋ねてほしいと、下手な英語で依頼していた。

ガーディアン紙とフランスのニュースサイト、ヌメラマ(Numeram)の調査レポートによると、ファジーは、インフルエンサーらに「この話題に関心があり、熱心に追及したいという態度を示す」よう求め、投稿記事や動画のなかで「広告」や「スポンサー」という言葉を使用しないことも要求していた。

チャンネル登録者数120万人を誇るフランスのサイエンス系ユーチューバー、レオ・グラセットは、代理店からの電子メールをスクリーンショットにしてツィッターでさらした。

「奇妙な話だ。私は動画でファイザー製ワクチンを攻撃するというパートナーシップ提案を受けた。報酬は莫大で、クライアントは正体を明かさず、資金提供のことも秘密にしろ、ということだ」と、グラッセットは24日にツイートした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米財務長官、FRBの金利管理システムを批判 「簡素

ワールド

EU、フィンランドに対する財政赤字是正手続き提案を

ワールド

OPECプラス30日会合で生産方針維持か、重点は各

ワールド

トランプ氏、感謝祭の七面鳥を恩赦 バイデン氏らに皮
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中