最新記事

台湾

出勤を認める、屋内飲食を禁止しない、アクリル板・消毒剤...台湾の感染爆発は必然だった

Saving Taiwan’s Success Story

2021年5月24日(月)18時30分
ウェイン・スン(米バッサー大学助教)、ホンホン・ティン(ミネソタ大学助教)

台湾では、屋内でアクリル板の設置が進んできたが、これも現時点では、感染防止効果は限定的とみられている。もっと重要なのは、屋内の空気循環を高め、エアフィルターを設置し、ミーティングや記者会見を屋外またはオンラインで実施することだ。

今すぐ屋内飲食の禁止を

その一方で、台湾メディアは屋外での運動を批判してきた。しかし新型コロナの感染という意味では、公園や運動場で1人で、あるいは家族と運動することは比較的安全だ。感染対策のため、長時間自宅にいる人にとっては、心身のストレスを大幅に緩和する重要な機会にもなる。

むしろ、飲食店での屋内飲食を完全に禁止しない台湾の方針のほうが、現在の科学的知見に反する。ワクチン接種が幅広く進まない限り、屋内飲食は感染の重大な機会になることが分かっている。

台湾と同じように、シンガポールやオーストラリア、ニュージーランドなどの国も、当初からゼロコロナポリシーを取ってきた。このうちシンガポールは今、台湾と同じように集団感染が起こっているが、最新の研究を受け、すぐに屋内飲食を禁止した。

オーストラリアも市中感染を根絶するため、短期的なロックダウンを実施して屋内飲食を禁止した。もし台湾が、今後もゼロ(または低レベルの)コロナポリシーを維持したいなら、全土で屋内飲食を厳しく制限するべきだ。

それ以外の対策としては、韓国が参考になるかもしれない。韓国は、民主主義国としてロックダウンを避ける一方で、検査の拡大と改良を続け、接触者追跡に力を入れてきた。その一方で、台湾のような感染者ゼロという極端な目標を掲げるのではなく、感染拡大を限定的に抑える政策を取って比較的成功してきた。国境も閉鎖していない。

韓国は、2015年にMERS(中東呼吸器症候群)の集団感染に対処した経験を生かして、大規模な検査と接触者追跡システムを確立し、その改良を続けている。全国に検査場を設置し、濃厚接触者はもちろん、感染の疑いがある人や、呼吸器疾患のある人の幅広い検査を推進してきた。これにより無症状感染者を発見してきたことも、感染拡大を限定的に抑えるカギとなった。

検査陽性率10%の衝撃

これに対して、台湾の検査は、主にクラスターが発生した場合に限定されてきた。このため当局の態勢も限定的だったのかもしれない。最近は感染者が多くて、接触者の特定が追い付かないという当局者の言葉が伝えられている。

これでは、素晴らしい接触者追跡システムも十分に機能しない可能性がある。大きなクラスターが発生した万華区の検査陽性率が10%という高い数字を示しているところを見ると、早い段階でもっと検査をしていれば、感染拡大を抑制できたかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中