コロナ禍で帰国者続出 イタリアの華僑コミュニティー
中国の方が安全
イタリアでは新型コロナによる死者が12万4000人を超えているが、中国で報告された死者は5000人に満たない。
だが、多くの中国系住民がこの街を離れたのは、感染の不安よりも経済的な困窮が原因だ。ロックダウンが繰り返される中で、イタリアの低コスト繊維産業が打撃を受けているからだ。
イタリアの経済活動は徐々に再開されているが、繊維産業で働く中国人労働者の多くにとってはすでに手遅れだ。
プラートで暮らす浙江省出身のジャーナリスト、フアン・ミャオミャオさんは、中国人コミュニティーの10%に当たる約2500人が昨年中に中国に戻ったと推測している。やはり市議会議員を務めるマルコ・ウォンさんは、この数字について「現実的だ」と評する。
公式データは現状に追いついていない。中国への帰国者がイタリア当局にその旨をわざわざ報告するとしても、数年先になりかねないからだ。
ウォンさんは「中国人コミュニティーでは、1980年代にここに来た人々ですら帰国について議論している」と語る。
「中国の経済は成長していると思われているし、イタリアでの状況と比較した場合、パンデミック対策の成功によって中国に対する肯定的な見方が強まっている」
イタリア経済は昨年、マイナス8.9%と急激に後退し、3月までの12カ月間で50万人もの雇用が失われた。
市議会の当局者は、プラートを離れる中国系住民の数が増加する一方、新たな転入者はほとんど見られないと話す。指標とされるのは、学校の在籍生徒数だ。
この当局者によれば、2019年までは、プラートの学校には毎年200人前後の中国人新入生が在籍していたという。だが2020年・2021年は「統計的に有意な数字はない、事実上ゼロ」と言う。
シャドーエコノミー
プラートの中国人コミュニティーがリセッションによる厳しい打撃を被ったのは、中国系住民の多くが非公式経済(シャドーエコノミー)で働いているためだ。これは、前年度の企業の納税申告書に基づく政府支援を受けられないことを意味する。
プラートのイタリア中国友好協会のルイジ・イェ会長は、「プラートの中国系企業の大半は非常に苦しんでいる」と語る。同協会では昨年、中国系住民800世帯に資金援助を提供した。
プラートの中国系住民は伝統的にお互いに助け合い、公共の福祉に頼ることは避けていた。だが、コロナ禍による貧困の深刻化に直面し、こうした「共助」の考え方は崩壊した。
市議会は昨年、中国系住民からの食糧配給の申請を449件、家賃補助の申請を218件受理した。2019年には、中国系住民からの家賃補助申請は1件もなかった。
中国人コミュニティーで住民保護協会を率いるルカ・ツォウさんは、「問題は、ここではもう仕事が無く、あるのは不安だけということだ」と語る。「多くの中国系住民がすでに街を離れたが、それ以外にも離れたいと思っている人は多い」
Silvia Ognibene(翻訳:エァクレーレン)
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