最新記事

新型コロナウイルス

若年の新型コロナ感染者で心臓血管系への影響が長期に及ぶおそれ、との研究結果

2021年5月17日(月)18時30分
松岡由希子

ベルギー、夜間外出禁止令の終了を祝う若者で賑わうが......    REUTERS/ YvesHerman

<新型コロナウイルスに感染し、軽症で回復した健康な若年の感染者でも、心臓血管系への影響がみられることが明らかとなった>

新型コロナウイルス感染症は主に呼吸器症状がみられる感染症として知られているが、軽症で回復した健康な若年の感染者でも心臓血管系への影響がみられることが明らかとなった。

米アパラチアン州立大学の研究チームは、新型コロナウイルスのPCR検査で陽性と診断され、3〜4週間経過した19〜21歳の15名と健康な22〜24歳の若者15名の計30名を対象に、頸動脈の超音波検査を用いて血管の健康度を調べた。なお、新型コロナウイルス感染症に罹患した被験者はいずれも軽症で回復し、入院した者はいない。

健康な若い人でも、長期にわたって影響が残るおそれがある

2021年4月26日に学術雑誌「エクスペリメンタル・フィシオロジー」で発表された研究結果によると、新型コロナウイルス感染症に罹患したグループは健康なグループに比べて、血管が硬く、弾力性が低い。脳へ血液を送る頸動脈の膨張性は27%低く、弾力性も22%低かった。また、心臓からの血液を全身に運ぶ大動脈にも影響がみられた。

サンプル数が小さく、新型コロナウイルス感染症に罹患した被験者の血管が罹患前にどのような状態であったのか不明な点で、この研究結果には限界があるものの、研究論文の責任著者でアパラチアン州立大学のステファン・ラッチフォールド准教授は「新型コロナウイルス感染症の影響を比較的受けづらいと考えられてきた健康な若い人でも、長期にわたって影響が残るおそれがある」と警鐘を鳴らす。研究チームでは、新型コロナウイルス感染症に罹患した被験者を6ヶ月追跡し、動脈が健康に回復するのかどうか、観察する方針だ。

回復した人の血管に変化がみられる

新型コロナウイルス感染症から回復した人の血管に変化がみられることは他の研究結果でも示されている。仏ストラスブール大学の研究チームは、2021年3月23日に発表した研究論文で「新型コロナウイルスへの感染者は、重症度にかかわらず、最長3ヶ月にわたって、血管内皮機能が低下する」ことを明らかにした。

また、アパラチアン州立大学の別の研究チームが2021年1月15日に発表した研究論文
では、新型コロナウイルスへの感染が確認されて3〜4週間経過した若者の血管機能に変化がみられることが示されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

次期FRB議長の条件は即座の利下げ支持=トランプ大

ビジネス

食品価格上昇や円安、インフレ期待への影響を注視=日

ビジネス

グーグル、EUが独禁法調査へ AI学習のコンテンツ

ワールド

トランプ氏支持率41%に上昇、共和党員が生活費対応
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 7
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 10
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中