インドのコロナ地獄を招いた張本人モディの、償われることのない重罪
Modi Fiddles, India Burns
いや、モディはしぶとい。グジャラート州首相になったばかりの02年、同州ではインド史上最悪の宗教間対立による暴力事件が続発し、モディの在任中に少なくとも1000人以上のイスラム教徒がヒンドゥー教徒によって虐殺された。モディへの風当たりは強まり、ナチス・ドイツのヒトラーに例えられたこともある。当時のアメリカ政府は彼の入国を禁じた。それでも、彼は国内の経済界を味方に付け、自分への悪評を消し去り、気が付けば近代化の旗手と目されていた。
16年の高額紙幣廃止は経済に大きな打撃を与え、多くのインド人の希望を完全に打ち砕いた。それでも有権者の心を巧みに支配するモディの力は弱まらなかった。まるで催眠術だ。高額紙幣廃止の悲劇から数カ月後、モディ率いるBJPはインド最大州の議会選で圧勝している。
今、目の前に広がる惨状は次元が違う。その責任を逃れることはできないが、モディが責任を取り、潔く身を引く気配は全くない。
次の総選挙は3年先だ。インド人は大昔の恨みを晴らすためならいくらでも血を流すが、政治家の悪行に関しては忘れっぽい。
名実共に独裁者に?
モディは国民の忘れやすさを当てにしている。過去の行状から見て、いずれ権力を失う可能性があるからといって意欲を失ったり、弱気になったりする男ではない。そんな状況は彼を元気づけ、より危険な存在にするだけだ。
モディは、いわゆる「ガンジー王朝」の呪縛から解放された最初のヒンドゥー教徒の首相で、植民地時代を含めても最強のヒンドゥー教支配者だ。そして「新インド」というスローガンの父でもある。モディが退場すれば、この空虚な「新インド」も粉々に砕け散るに違いない。
思えば、半世紀近く前のインディラ・ガンジーも政権を追われることを恐れて非常事態を宣言し、憲法を停止し、独裁者に変身したのだった。今まで選挙で負けたことのないモディが、もう選挙では勝てないと気付いたとき、先人ガンジーの例に倣おうとする可能性は否定できない。
死人が街にあふれる現状は彼の無能さ・無謀さをさらけ出しているが、それは彼に民主主義の停止を正当化させる口実を与えるかもしれない。インドの状況は今でも事実上の非常事態に等しいが、この男なら平気で、これを常態化しかねない。
新型コロナウイルスの危機はインド独立以来最大の悲劇だが、それをも自分の利益に変えようとする男。それがナレンドラ・モディだ。
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