最新記事

教育

日本の高校生はアメリカの3倍、授業中に居眠りしている

2021年5月19日(水)11時40分
舞田敏彦(教育社会学者)

ただ日本の高校生の朝は早く、九州の公立高校では朝補習(朝課外)がある。九州名物と名高く、四半世紀ほど前、筆者も鹿児島県で経験した。「朝補習や長期休暇補習のおかげで、予備校に行かずとも国立大学に受かる学力がつく」と言われ、ありがたいと思ったが、睡眠時間を削られ、眠い目をこすりながら登校した記憶がある。

data210519-chart02.png

高校の朝補習の影響かは分からないが、九州の10代の睡眠時間は短い。6時間未満の者の割合を見ると、上位5位までを九州県が占めている<表1>。弁当を作る母親はもっと早起きを強いられ、「学校の厚意はありがたいが、何とかならないか」と思っている人もいるだろう。生徒にしても正規の授業で居眠りをするなど、朝課外ならぬ「朝加害」という悪い冗談も飛び交っている。

体質が夜型になりやすい青年期の生徒に早寝早起きを強いるのは好ましくない、という指摘もある。アメリカ西海岸のシアトルで、高校の始業時間を7時50分から8時45分に遅らせたところ、生徒の睡眠時間が増えて学業成績も向上した、という報告もある(「高校の始業時間を遅らせると生徒の成績が向上 米シアトルで実験」ダイヤモンド・オンライン、2019年8月24日)。

1時間遅らせるだけで効果がある。公立学校の場合、始業時間をどうするかは各学校の任意だ(学校教育法施行規則60条)。ちょっと工夫することで、授業での生徒の集中力も増すかもしれない。朝のラッシュも緩和されるだろう。

朝補習にしても参加は任意であることをはっきりと伝え、生活が夜型になりがちな高校生に早朝の学習をさせるのは効果があるのか、という科学的な知見も踏まえる必要がある。最も考えないとけないのは生徒の健康だ。

<資料:国立青少年教育振興機構「高校生の心と体の健康に関する意識調査」(2018年3月)、
    厚労省『国民生活基礎調査』(2019年)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アクティビスト、世界で動きが活発化 第1四半期は米

ワールド

フィンランドも対人地雷禁止条約離脱へ、ロシアの脅威

ワールド

米USTR、インドの貿易障壁に懸念 輸入要件「煩雑

ワールド

米議会上院の調査小委員会、メタの中国市場参入問題を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中