最新記事

中国

恐るべき江沢民の【1996】7号文件──ウイグル「ジェノサイド」の原型

2021年5月3日(月)12時40分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

●新疆ウイグル自治区の各レベルの中国共産党委員会、政府と関係部門は、民族の団結と法律を守るという旗を高く掲げ、どのようなことがあっても民族分裂主義者の活動を食い止めるべく方針を立てて闘わねばならない。

●肝心なのは資源の優勢を経済の優勢に変えることだ(筆者注:新疆ウイグル自治区には石油、天然ガス、レアアースなど経済発展に欠かせない資源が豊富なだけでなく、中央アジア5ヵ国とのパイプラインの結集点でもある)。

●新疆は21世紀の我が国の経済成長の重要な成長点となるだろう。

中発【1996】7号文件によりウイグル族の「民族性」を薄める

紀要に書かれているのは精神論的言葉だが、具体的にどのような方向に動いたかというと、以下のいくつかを挙げることができる。

1.新疆ウイグル自治区に漢民族のエリートを送り込み幹部に就かせること。これは中共中央組織部や人事部などから1996年10月18日に「組通字【1996】44号として通達が出ている。非常に具体的で、たとえば漢民族の幹部を自治区以外の内地のどの都市から選んで新疆ウイグル自治区のどの都市(あるいは州・地区)に派遣するかという具体案まで示されている。以下にその例を示す。

 江西省→キルギス自治州

 天津市と山東省→カシュガル地区

 北京市と浙江省→ホータン(和田)地区

 上海市と河南省→アクス地区

 江蘇省→イリ・カザフ自治州

これは1954年から毛沢東の命令により王震が始めた「新疆生産建設兵団(漢民族から構成される)」の狙いと同じで、新疆ウイグル自治区を「漢民族化」してしまおうという戦略の一つである。東トルキスタン(現在の新疆ウイグル自治区)が中国人民解放軍によって占領された時の人口比率からすると、100倍以上の漢民族が増え、ウイグル族の割合は比較にならないほど減っている。その変化は「人口比」だけでなく、絶対数においても見られ、大量殺戮や純粋な「民族の血」を保つウイグル族を減少させる方針で動いてきた。

2.ウイグルの若者を内地(自治区以外の漢民族が多い地)に派遣して勉学させ、漢民族の文化に慣らさせ、中国共産党を礼賛する「愛国分子」に育て上げること。これは教民[2000]3号あるいは教民「2000」7号などとして、1999年あるいは2000年から実施されている。この年齢層の若者たちも学業を終えた後に自治区以外で漢民族などウイグル族以外の人と結婚する可能性がある。その後にウイグル自治区に戻れば、自治区内の独立志向の人たちに影響を与えることができると当局は考えていると、ウイグル人たちはみなしている。「民族浄化」の狡猾なやり方だと非難している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

コロンビア政府への軍事作戦は良い考え=トランプ氏

ワールド

スターマー英首相、短期政権交代は「国益に反する」と

ワールド

ミャンマー総選挙、第1回は国軍系USDPがリード 

ワールド

ウクライナ、年初から連日モスクワ攻撃とロ国防省 首
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...強さを解放する鍵は「緊張」にあった
  • 2
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 3
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 4
    2026年の節目に問う 「めぐみの母がうらやましい」── …
  • 5
    ベネズエラ攻撃、独裁者拘束、同国を「運営」表明...…
  • 6
    野菜売り場は「必ず入り口付近」のスーパーマーケッ…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    「対テロ」を掲げて「政権転覆」へ?――トランプ介入…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中