最新記事

ワクチン

鼻スプレー型ワクチン、各国で臨床試験へ 気道内の免疫形成に有利

2021年4月30日(金)18時30分
青葉やまと

扱いが難しい注射型のワクチン接種を見直し、スプレー式の普及につなげる動きが活発だ...... nensuria-iStock

<ワクチン接種が進まない日本を尻目に、世界では一歩先を見据えた研究が進む。各国で臨床試験が始まる鼻スプレー型ワクチンは、手軽に接種できるだけでなく、従来型より高い有効率が見込まれるという>

英オックスフォード大学は3月、アストラゼネカ社と共同開発した鼻腔スプレー式ワクチンの初期段階の試験について、参加者の募集に入った。英フィナンシャル・タイムズ紙が入手した文書により明らかになった。第1段階の試験を7月ごろまでに終える計画だ。

こうした動きは、世界的にもめずらしいものではない。カナダ、オーストラリア、ロシア、インドなど世界各国で、扱いが難しい注射型のワクチン接種を見直し、スプレー式の普及につなげる動きが活発だ。

カナダではサイトファージ社が、鼻腔および口腔スプレー式ワクチンの試験に乗り出そうとしている。ラジオ・カナダによると、まずは動物実験で安全性を確かめる方針だ。

オーストラリアではすでに動物を用いた前段階の試験が完了しており、6月から9月に人間を対象とした臨床試験に入る計画になっている。

ロシアではすでに、スプートニクVワクチンの経鼻投与の臨床試験が始まっている。試験を主導するガマレヤ記念国立疫学・微生物学研究センターは、現在までのところ重篤な副作用は確認されていないと胸を張る。

感染第2波が深刻なインドでも、バーラト・バイオテック社が鼻腔スプレーのテストに着手した。人口13億を超えるインドで全員が二度のワクチン接種を受けるには、26億本の注射針が必要になる。


現地ニュース局の『インディアTV』は、注射器を必要とせず接種も1回で済むこのワクチンが、「COVIDとの闘いを根本から変える革命的な存在」になるのではないかと期待を寄せている。

これらに加えて中国本土ではすでに第二段階までの試験が完了しており、香港でのさらなる試験を待っている段階だ。

注射型よりも高い効果が期待されている

注射器を必要としない鼻スプレー型ワクチンが実用化に至れば、より手軽にワクチンを接種できるようになる。往々にして手軽な代替手段というものは、効果の面で劣るのが相場だ。しかし、新型コロナ用ワクチンの場合、むしろ注射型よりも優秀な免疫作用をもたらすことが予想されている。

フィナンシャル・タイムズ紙は、「鼻腔スプレー型ワクチンは投与が従来よりも容易であり、かつ感染率を顕著に引き下げる可能性がある。COVID-19を引き起こすSars-Cov-2ウイルスが、主として(鼻腔から喉までの)上気道から侵入するためだ」と解説している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英金融市場がトリプル安、所得税率引き上げ断念との報

ワールド

ロシア黒海の主要港にウの無人機攻撃、石油輸出停止

ワールド

ウクライナ、国産長距離ミサイルでロシア領内攻撃 成

ビジネス

香港GDP、第3四半期改定+3.8%を確認 25年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 5
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 6
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 7
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 10
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中