最新記事

日韓関係

慰安婦訴訟は却下...時間が解決しない日本と韓国の歴史問題にバイデンはどう出る?

The Legacy of Wartime Atrocities

2021年4月30日(金)11時57分
スルキ・リー、ソフィア・ジョーンズ、ロビー・グレーマー

4月16日にはバイデンはホワイトハウスで菅義偉首相と会談。大統領就任後にバイデンが外国の首脳と対面で話し合ったのはこれが初めてだ。バイデンと菅は共同記者会見と公式声明で、日米同盟は「揺るぎないもの」だと宣言。中国と北朝鮮の脅威、さらにはそれに対抗する日米とオーストラリア、インドの4カ国の連携にも言及したが、韓国については触れなかった。

公正な裁きとは何なのかが問われているのは慰安婦問題だけでない。日本が朝鮮半島を統治していた時代の「負の遺産」全体が未解決のままだ。第2次大戦前と戦中に日本は朝鮮半島から何十万人(韓国の一部には何百万人との見方もある)もの住民を、兵士あるいは労働者として徴用した。

しこりの解消が急務

「こうした歴史問題をただの脇筋のように言うのは間違いだ」と、オバマ政権時代に副大統領だったバイデンの安全保障スタッフを務めたジェイコブ・ストークスは言う。「どんな地域秩序を構築すべきかを根本的に考えるには、歴史問題は看過できない」

日韓のしこりとなっている歴史問題にどう対処すべきか、そもそも対処すべきか否か、米政府は決めかねていると、専門家は指摘する。日韓それぞれの優先課題に配慮し、それぞれの国内事情とアメリカの地政学的戦略の兼ね合いを探りつつ、日米韓3カ国の連携を強化するのは至難の業だ。

韓国では反日感情、日本では嫌韓感情が根強くあり、第2次大戦中の残虐行為をめぐる両国の緊張が時間とともに弱まることは期待できないと、米シンクタンク・外交問題評議会の日本研究員、シーラ・スミスは言う。

日韓のしこりは日米韓3カ国の連携を揺るがすばかりか、バイデン政権が目指すインド太平洋地域全域での同盟関係の強化にも悪影響を及ぼす。

日韓の「歴史問題は形こそ変われど常に存在した」と、スミスは言う。「両国の経済関係は非常に強固だが、そこにも歴史問題が影を落とし、安全保障やアメリカとの同盟関係にまで波及している」

元慰安婦は今や80、90代。それでも彼女たちは公正な裁きを求める闘いを決して放棄しないと、支援者らは言う。

被害者たちに残された時間が少なくなるなか、しこりの解消は日韓だけでなく、地域全体にとっても焦眉の課題だ。

From Foreign Policy Magazine

ニューズウィーク日本版 日本時代劇の挑戦
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月9日号(12月2日発売)は「日本時代劇の挑戦」特集。『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』 ……世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』/岡田准一 ロングインタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は横ばい、前日安から反発後に失速 月初の需

ビジネス

午後3時のドルは155円後半で小幅高、円売りじわり

ビジネス

英、ESG格付け規則を28年施行へ 利益相反懸念に

ビジネス

ユニクロ、11月国内既存店売上高は前年比7.6%増
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 2
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カニの漁獲量」が多い県は?
  • 3
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 4
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 10
    600人超死亡、400万人超が被災...東南アジアの豪雨の…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中