慰安婦訴訟は却下...時間が解決しない日本と韓国の歴史問題にバイデンはどう出る?
The Legacy of Wartime Atrocities
4月16日にはバイデンはホワイトハウスで菅義偉首相と会談。大統領就任後にバイデンが外国の首脳と対面で話し合ったのはこれが初めてだ。バイデンと菅は共同記者会見と公式声明で、日米同盟は「揺るぎないもの」だと宣言。中国と北朝鮮の脅威、さらにはそれに対抗する日米とオーストラリア、インドの4カ国の連携にも言及したが、韓国については触れなかった。
公正な裁きとは何なのかが問われているのは慰安婦問題だけでない。日本が朝鮮半島を統治していた時代の「負の遺産」全体が未解決のままだ。第2次大戦前と戦中に日本は朝鮮半島から何十万人(韓国の一部には何百万人との見方もある)もの住民を、兵士あるいは労働者として徴用した。
しこりの解消が急務
「こうした歴史問題をただの脇筋のように言うのは間違いだ」と、オバマ政権時代に副大統領だったバイデンの安全保障スタッフを務めたジェイコブ・ストークスは言う。「どんな地域秩序を構築すべきかを根本的に考えるには、歴史問題は看過できない」
日韓のしこりとなっている歴史問題にどう対処すべきか、そもそも対処すべきか否か、米政府は決めかねていると、専門家は指摘する。日韓それぞれの優先課題に配慮し、それぞれの国内事情とアメリカの地政学的戦略の兼ね合いを探りつつ、日米韓3カ国の連携を強化するのは至難の業だ。
韓国では反日感情、日本では嫌韓感情が根強くあり、第2次大戦中の残虐行為をめぐる両国の緊張が時間とともに弱まることは期待できないと、米シンクタンク・外交問題評議会の日本研究員、シーラ・スミスは言う。
日韓のしこりは日米韓3カ国の連携を揺るがすばかりか、バイデン政権が目指すインド太平洋地域全域での同盟関係の強化にも悪影響を及ぼす。
日韓の「歴史問題は形こそ変われど常に存在した」と、スミスは言う。「両国の経済関係は非常に強固だが、そこにも歴史問題が影を落とし、安全保障やアメリカとの同盟関係にまで波及している」
元慰安婦は今や80、90代。それでも彼女たちは公正な裁きを求める闘いを決して放棄しないと、支援者らは言う。
被害者たちに残された時間が少なくなるなか、しこりの解消は日韓だけでなく、地域全体にとっても焦眉の課題だ。
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