最新記事

起業

イスラエルが「スタートアップ大国」になれた理由は、全部これで説明できる

2021年4月27日(火)19時24分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部、前田恵理

──日本と違い、イスラエルは文化的に多様であることで知られています。本書にもある通り、多様性が創造性とイノベーションを育む源泉であるならば、文化的多様性と縁遠い日本で、創造性とイノベーションを身につけるために、私たちは何をする必要があるのでしょうか?

イノベーションと起業家精神は、今やすべての人類が身につけるべき基礎的なスキルになっていると思います。もはや人生において確実なものなどありません。地球を取り巻くすべての事象が私たちに影響を及ぼします。

AIやロボットなどの急速な成長と相まって、人間としての優位性である問題解決力、創造性、イノベーション、感情指数(EI)、リーダーシップや柔軟に変化に対応する順応力といったソフトスキルが、今後さらに重要になっていくでしょう。今まで小さな組織やスタートアップにとっての常識であったこれらのスキルが、今やすべての組織にとって必要不可欠なものとなっているのです。

日本企業の古い伝統や、日本の会社員を支えてきた制度(終身雇用や年功序列など)は、秩序を保つためにはとても重要です。しかし、急速に変化する現代において、これまでとは異なる新しい考え方やアプローチが必要になるでしょう。

──フツパ精神は兵役制と深く関わりがあると感じました。

多くの人にとって、ビジネスの世界を軍隊の特殊部隊に例えることはピンとこないでしょう。イスラエル軍隊を体験した私自身もそう考えています。

しかしながら、イスラエル国防軍のエリート部隊での経験と、20年以上にわたるビジネス経験から、私は特殊部隊の考え方は創造的で成長する企業にも適用できるし、また適用すべきであるとの結論に達しました。それらはチームの特性から組織構造や組織風土にまで及びます。

これは批判を奨励し、権威に挑戦する、(イスラエル軍のような)軍隊組織においてのみ言えることですが、所属するすべての人の意見を取り入れ、過去に囚われるのではなく、将来の可能性をベースに決断することです。そうすることで、組織に属する人々のソフトスキルを新たなステージに引き上げてくれるはずです。

企業に当てはめて考えるならば、新入社員を過去の実績ではなく本人の潜在力をベースに評価したらどうなのでしょうか? バックグラウンドが異なり、多様な会話をもたらす人たちを集めてチームを作ったらどうでしょうか?

すべての人たちに対して言えることですが、言われたことだけをするのではなく、質問したり考えることを奨励するのはどうでしょうか? こうした取り組みによって、より創造力に富んだ組織が実現されるのです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノバルティスとロシュ、トランプ政権の薬価引き下げに

ビジネス

中国の鉄鋼輸出許可制、貿易摩擦を抑制へ=政府系業界

ワールド

アングル:米援助削減で揺らぐ命綱、ケニアの子どもの

ワールド

訂正-中国、簡素化した新たなレアアース輸出許可を付
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中