イスラエルが「スタートアップ大国」になれた理由は、全部これで説明できる
──日本と違い、イスラエルは文化的に多様であることで知られています。本書にもある通り、多様性が創造性とイノベーションを育む源泉であるならば、文化的多様性と縁遠い日本で、創造性とイノベーションを身につけるために、私たちは何をする必要があるのでしょうか?
イノベーションと起業家精神は、今やすべての人類が身につけるべき基礎的なスキルになっていると思います。もはや人生において確実なものなどありません。地球を取り巻くすべての事象が私たちに影響を及ぼします。
AIやロボットなどの急速な成長と相まって、人間としての優位性である問題解決力、創造性、イノベーション、感情指数(EI)、リーダーシップや柔軟に変化に対応する順応力といったソフトスキルが、今後さらに重要になっていくでしょう。今まで小さな組織やスタートアップにとっての常識であったこれらのスキルが、今やすべての組織にとって必要不可欠なものとなっているのです。
日本企業の古い伝統や、日本の会社員を支えてきた制度(終身雇用や年功序列など)は、秩序を保つためにはとても重要です。しかし、急速に変化する現代において、これまでとは異なる新しい考え方やアプローチが必要になるでしょう。
──フツパ精神は兵役制と深く関わりがあると感じました。
多くの人にとって、ビジネスの世界を軍隊の特殊部隊に例えることはピンとこないでしょう。イスラエル軍隊を体験した私自身もそう考えています。
しかしながら、イスラエル国防軍のエリート部隊での経験と、20年以上にわたるビジネス経験から、私は特殊部隊の考え方は創造的で成長する企業にも適用できるし、また適用すべきであるとの結論に達しました。それらはチームの特性から組織構造や組織風土にまで及びます。
これは批判を奨励し、権威に挑戦する、(イスラエル軍のような)軍隊組織においてのみ言えることですが、所属するすべての人の意見を取り入れ、過去に囚われるのではなく、将来の可能性をベースに決断することです。そうすることで、組織に属する人々のソフトスキルを新たなステージに引き上げてくれるはずです。
企業に当てはめて考えるならば、新入社員を過去の実績ではなく本人の潜在力をベースに評価したらどうなのでしょうか? バックグラウンドが異なり、多様な会話をもたらす人たちを集めてチームを作ったらどうでしょうか?
すべての人たちに対して言えることですが、言われたことだけをするのではなく、質問したり考えることを奨励するのはどうでしょうか? こうした取り組みによって、より創造力に富んだ組織が実現されるのです。