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女子の理系学力を「ムダ」にしている日本社会

2021年4月21日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
理系女子

「女子が理系なんて」という偏見が日本ではまだ根強い ali_asenova/iStock.

<高校生の数学力の男女差はそれ程大きくないのに、大学で理系を専攻する女子の比率は17%しかない>

日本は、リケジョが少ない国であることはすっかり知れ渡っている。理学・工学専攻の大学入学者の女子比率は17%しかない(2017年)。国際的に見て日本の女子生徒の理系学力は高いのに、これはどうしたことか。海外の人にすれば甚だ疑問のようで、OECD(経済協力開発機構)のスキル局長は、理系の成績が優秀な女子が理系を志望しないのは問題と指摘している。

理系の成績が優秀な高校生を取り出し、男女の内訳をみるとそれほど大きな偏りはない。OECD加盟国の学習到達度調査「PISA 2018」において、数学的リテラシーの成績が優秀な15歳生徒(レベル5・6)の男女比は、男子が57%、女子が43%だ。それにもかかわらず理系専攻の大学入学者の女子比率は、上述のように17%しかない。女子の理系能力が十分に活用された場合の期待値よりだいぶ低い。しかし他の国では違う。<表1>は、8カ国のデータの対比だ。

data210421-chart01.png

数学ができる高校生の女子比率は、どの国もあまり変わらない。違うのは理系専攻の大学入学者の女子比率で、日本は17%でしかないが、他国では3割を超え、ニュージーランドは42%にもなる。

表の2つの数値の隔たりから、女子の理系能力の活用度を数値化できる。数学ができる高校生の女子比(a)に、理系専攻の大学入学者の女子比(b)がどれほど近いかの数値だ。日本の場合、後者は前者の4割でしかない。他国の数値は日本より高く、イタリアやニュージーランドは2つの数値がほぼ等しい。女子の理系能力が活用されている。イタリアでは、通常の期待値(1.0)を上回ってすらいる。

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