最新記事

ウクライナ

ロシア、ウクライナ国境でクリミア侵攻以来の軍備増強

Ukraine's Troops 'Ready' for Russian Assault As Tensions Rise Amid Envoy Arrest

2021年4月19日(月)17時04分
ブレンダン・コール
ウクライナ東部のドネツク付近で戦闘に備えるウクライナ軍兵士

親ロシア勢力との紛争が続くウクライナ東部のドネツク付近で戦闘に備えるウクライナ軍兵士(2021年4月)Serhiy Takhmazov-REUTERS

<国境に部隊を集結させた上、ウクライナの総領事をスパイ容疑で拘束。また戦争を始めるつもりなのか>

ロシアがウクライナとの国境地帯で軍備を増強していることに懸念が高まるなか、ウクライナ側司令官は、ウクライナ軍はロシア軍の攻撃に対して「準備ができている」と語った。

ロシアとウクライナの緊張は国境付近だけではない。司令官がこのコメントを発する前、ロシアの情報機関である連邦保安局(FSB)は、ロシア国民から機密情報を受け取った容疑でウクライナの外交官を拘束したと発表した。

ロシア軍はウクライナ東部の国境付近に数万人の部隊を集結させ、戦車やロケット砲、防空システムも配備している。ロシア政府は、軍の増強は北大西洋条約機構(NATO)の配備に対応したものであり、一時的な措置だと主張した。

だが今回の動きは、ロシアがウクライナの領土とされていたクリミアを併合した2014年のクリミア侵攻以来最大規模の増強であることから、ロシアが再びウクライナの領土を侵略するのではないかという不安が高まっている。

ウクライナの合同軍作戦で副司令官を務めるヴィクトル・ガヌシュチャク少将は、配下の軍隊はロシアの次の動きに備えていると語った。

英テレグラフ紙によると、「ロシア軍が攻撃するとしても、対処する準備はできている」と、ガヌシュチャク少将は国境の最前線近くで行われた記者会見で語った。「国境の向こう側で部隊と兵器が増加していることは認識しているが、確実なことはいえない」

ロシアへの敵対行為

「いかなる予測もできない。だがロシア側は、ウクライナ国境近くに多数の戦術部隊を集結させている」と、ガヌシュチャクは付け加えた。

ロシアとウクライナの間にはただでさえ不信感がある。そこに起きたのが、サンクトペテルブルクのウクライナ総領事館で、オレクサンドル・ソソニウク総領事が拘束されるという事件だ。

FSBは17日、FSBと法執行機関のデータベースから機密情報を得た容疑でソソニウクを拘束したことを発表した。

「外交官という立場にそぐわない行為であり、ロシア連邦に対して明らかに敵対的な性質が認められる」と、FSBは声明で述べた。

ロシアは以前にスパイ容疑でウクライナ国民を拘束したことがあるが、外交官を拘束することはめったにない。ウィーン条約の下で、外交官には駐在国における免責特権が認められている。だが「法律違反や敵対的な行動をした場合」は、受け入れ国が「ペルソナ・ノン・グラタ(駐在国において望ましくない人物)」を宣言し、外交官として受け入れ拒否や外交官待遇の同意の取り消しをすることができる。

ロシア外務省筋は国内有力紙コメルサントに、総領事は国外退去になる可能性が高いと語った。

同紙は、「総領事がペルソナ・ノン・グラタを宣言されるのか、それともロシア国内滞在の継続は望ましくないという声明に留まるのか、それはわからない」という情報筋のコメントも伝えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは149円後半へ小幅高、米相互関税警

ワールド

米プリンストン大への政府助成金停止、反ユダヤ主義調

ワールド

イスラエルがガザ軍事作戦を大幅に拡大、広範囲制圧へ

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中