最新記事

ゲームチェンジャー

米コインベース上場、仮想通貨が金や為替と並ぶ主流資産に食い込む起爆剤となるか

2021年4月16日(金)19時33分
ジェンキンス沙智(在米ジャーナリスト)
タイムズスクエアの巨大スクリーンに映し出されたコインベースのロゴ

ナスダック上場の日、タイムズスクエアの巨大スクリーンに映し出されたコインベースのロゴ(4月14日、ニューヨーク) Shannon Stapleton-REUTERS 

<ビットコイン価格急騰の波に乗る仮想通貨取引所大手コインベースが鳴り物入りで上場、時価総額はNYSEやナスダックを大きく上回った>

今週14日(水)の米株式市場は寄り付き前から高揚感と期待感に包まれ、日中を通して「歴史的」「象徴的」などの言葉が飛び交うなど、どこかお祭り騒ぎの様相を呈していた。

その理由は、S&P500株価指数が取引時間中に過去最高値を更新したからでも、大手銀行の第1四半期決算が大幅増益になったからでもなく、コインベース・グローバルという一般的にはあまり馴染みのない会社がナスダック市場への上場を果たしたからだった。

米サンフランシスコに拠点を置くコインベースはいわゆる暗号資産(仮想通貨)取引所の最大手で、ビットコインをはじめ約50種類の暗号資産を取り扱っている。2012年に創業され、現在では100ヵ国以上で約5600万人に利用されており、プラットフォーム上の総資産額は暗号資産市場の11.3%シェアに相当する2230億ドルに上る。

同社の上場は米国の暗号資産取引所として初めてで、折しもビットコイン価格が年初来2倍以上に跳ね上がり、大手企業や金融機関も拡大しつつあるパイの一部を取り逃がすまいとこぞって参入するなど、仮想通貨界隈がかつてないほど盛り上がりを見せる中で行われた。

新株を発行しない直接上場(ダイレクトリスティング)としてはナスダック市場初めてのケースでもあり、注目度の高さから午前中は買い気配で値が付かず、午後になってようやく参考価格の250ドルに対して初値381ドルで取引を開始した。その後すぐに一時429.54ドルまで上昇した後、328.28ドルへと反落して大引けを迎えた。

終値に基づく時価総額は完全希薄化ベースで約860億ドル(約9兆4000億円)と、ニューヨーク証券取引所(NYSE)の親会社であるインターコンチネンタル取引所(ICE)やナスダックを大幅に上回る規模となった。フォーチュンによると上場時の時価総額としては民泊大手エアビーアンドビーやSNS大手フェイスブックなどに次いで米国史上5位以内に入ったと推定される。

暗号資産市場は分岐点に差し掛かっている

暗号資産に明るい一部の市場参加者や投資家以外にはほぼ無名に近かった同社がこれだけ注目されたのは、コインベースの上場が従来ニッチな市場で実体も掴みにくく、やや敬遠されがちだった暗号資産の世界がメインストリームに躍り出るきっかけになると期待されているからだ。

ビットワイズ・アセット・マネジメントの首席投資責任者、マット・ホウガン氏はCNBCとのインタビューで、暗号資産はこれまでその他主要資産と一線を画す「壁」に隠れる形で発展してきたが、コインベースの上場が「この壁を取っ払うことになる」と指摘した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米中堅銀、年内の業績振るわず 利払い増が圧迫=アナ

ビジネス

FRB、現行政策「適切」 物価巡る進展は停滞=シカ

ビジネス

英インフレ、今後3年間で目標2%に向け推移=ラムス

ビジネス

ECB、年内に複数回利下げの公算=ベルギー中銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中