最新記事

ヘイトクライム

アジア系を守れ! 大統領副補佐官に日系人、街ではボディーガード制......試み続々

2021年4月16日(金)16時00分
青葉やまと

各地でヘイトクライムの根絶に向けた独自の取り組みが続々と始動している...... REUTERS/ Jeenah Moon

<アジア系を標的にした銃撃など事件が絶えないアメリカで、暴力と武装に頼らず差別主義と闘うための試みが広がっている...... >

アジア系が被害者となる痛ましい事件がアメリカで続く。3月にはアトランタなど複数のマッサージ店で銃撃事件が相次ぎ、アジア系女性6名を含む8名が犠牲となった。ベイエリアとニューヨークを中心にヘイトクライムは急増しており、全米での差別的事件は過去1年間で3700件を数える。

事態を重く見たバイデン米大統領は4月14日、ヘイト問題に対応する大統領副補佐官ポストを新設し、日系人のエリカ・モリツグ氏を指名した。オバマ政権時代、モリツグ氏は米住宅都市開発省の議会・政府間関係担当次官に登用されている。現在は有色人種の女性のための公共政策を推進するNGOにおいて、議会関係・社会正義担当副会長として活動する。

モリツグ氏はカリフォルニアに生まれ、ハワイで育った。AAPI(アジア太平洋諸島系)と呼ばれる人々が昨今の理不尽な暴力の対象になっており、ハワイ諸島もこの地域のひとつだ。ホワイトハウスは「モリツグはバイデン・ハリス政権において自身の経験を活かし、大統領と政権の優先事項を前進させる極めて重要な発言者となります」と述べ、彼女の活躍に期待を寄せる。

対策に本腰を入れ始めたのは、政府レベルだけではない。全米各地の自治体や有志たちが、ヘイトクライムの根絶に向けた独自の取り組みを続々と始動している。

西海岸では買い物にボディーガード役が同行

米ABC系列のABC10は、一部地域でスタートしたボディーガード制を報じている。カリフォルニア州北部のエルクグローブ市が3月に導入したこの試みは、「バディ・システム」と呼ばれる。

'Buddy system' in Elk Grove aims to protect AAPI community


外出に怯えるアジア系の住人は誰でも、専用ダイヤルに電話かけてボディーガード役の派遣をリクエストすることができる。スーパーへの買い物や医院での診察へ足を運ぶ際に、市民ボランティアが目的地まで同行し、安全を確保するしくみだ。

アメリカでは通りすがりのアジア人を狙った白昼堂々の暴力事件が相次いでおり、これを受けての措置となる。エルクグローブ市では人口のおよそ3人に1人がアジア系住民となっていることから、市警察もコミュニティの力を活かしたヘイト事件の未然防止に期待を寄せている。

住民の善意は続く。カリフォルニア州サンノゼでは地元組織がパトロールに乗り出し、年配のアジア系住民の安全を確保しはじめた。サンノゼは日本食レストランなどが軒を連ねるジャパンタウンを擁し、アジア系市民の往来が盛んだ。警察もジャパンタウンを中心にパトロールを強化していたが、米公共放送局のNPRによると、住民はジョギングに出るにも恐怖を感じるほどだったという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は反落、短期過熱感を嫌気 日米交渉へ

ワールド

豪住宅価格は6月も最高更新、利下げ効果で5カ月連続

ビジネス

農業を犠牲にしない、安心して再生産できる環境重要=

ワールド

アングル:アマゾン販売の中国製品がCPI上回る値上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 3
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 4
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中