アジア系を守れ! 大統領副補佐官に日系人、街ではボディーガード制......試み続々
各地でヘイトクライムの根絶に向けた独自の取り組みが続々と始動している...... REUTERS/ Jeenah Moon
<アジア系を標的にした銃撃など事件が絶えないアメリカで、暴力と武装に頼らず差別主義と闘うための試みが広がっている...... >
アジア系が被害者となる痛ましい事件がアメリカで続く。3月にはアトランタなど複数のマッサージ店で銃撃事件が相次ぎ、アジア系女性6名を含む8名が犠牲となった。ベイエリアとニューヨークを中心にヘイトクライムは急増しており、全米での差別的事件は過去1年間で3700件を数える。
事態を重く見たバイデン米大統領は4月14日、ヘイト問題に対応する大統領副補佐官ポストを新設し、日系人のエリカ・モリツグ氏を指名した。オバマ政権時代、モリツグ氏は米住宅都市開発省の議会・政府間関係担当次官に登用されている。現在は有色人種の女性のための公共政策を推進するNGOにおいて、議会関係・社会正義担当副会長として活動する。
モリツグ氏はカリフォルニアに生まれ、ハワイで育った。AAPI(アジア太平洋諸島系)と呼ばれる人々が昨今の理不尽な暴力の対象になっており、ハワイ諸島もこの地域のひとつだ。ホワイトハウスは「モリツグはバイデン・ハリス政権において自身の経験を活かし、大統領と政権の優先事項を前進させる極めて重要な発言者となります」と述べ、彼女の活躍に期待を寄せる。
対策に本腰を入れ始めたのは、政府レベルだけではない。全米各地の自治体や有志たちが、ヘイトクライムの根絶に向けた独自の取り組みを続々と始動している。
西海岸では買い物にボディーガード役が同行
米ABC系列のABC10は、一部地域でスタートしたボディーガード制を報じている。カリフォルニア州北部のエルクグローブ市が3月に導入したこの試みは、「バディ・システム」と呼ばれる。
外出に怯えるアジア系の住人は誰でも、専用ダイヤルに電話かけてボディーガード役の派遣をリクエストすることができる。スーパーへの買い物や医院での診察へ足を運ぶ際に、市民ボランティアが目的地まで同行し、安全を確保するしくみだ。
アメリカでは通りすがりのアジア人を狙った白昼堂々の暴力事件が相次いでおり、これを受けての措置となる。エルクグローブ市では人口のおよそ3人に1人がアジア系住民となっていることから、市警察もコミュニティの力を活かしたヘイト事件の未然防止に期待を寄せている。
住民の善意は続く。カリフォルニア州サンノゼでは地元組織がパトロールに乗り出し、年配のアジア系住民の安全を確保しはじめた。サンノゼは日本食レストランなどが軒を連ねるジャパンタウンを擁し、アジア系市民の往来が盛んだ。警察もジャパンタウンを中心にパトロールを強化していたが、米公共放送局のNPRによると、住民はジョギングに出るにも恐怖を感じるほどだったという。