最新記事

ヘイトクライム

アジア系を守れ! 大統領副補佐官に日系人、街ではボディーガード制......試み続々

2021年4月16日(金)16時00分
青葉やまと

事態を受けて立ち上がったのは、地元の防災組織だ。これまでは災害への備えを主眼にしていたが、ヘイトクライムの急増を受け、差別からの住人の保護に乗り出した。メンバーは対話に軸足を置いており、護身用の唐辛子スプレーすら携行しない。差別主義者との会話法を中心にしたトレーニングを受けており、あくまで武装なしに地域の安全に貢献することを目指している。

ある日系住民はパトロールが始まって以来、ランチに外出することに恐怖感がなくなったといい、如実に効果を発揮しているようだ。

ニューヨークでは安全な帰路を支援

一方、東海岸では、安全な帰宅を資金面からサポートする有志が現れた。支援を実現したのは、ニューヨークに住むマデリン・パク氏だ。アジア系の高齢女性を対象に、ニューヨーク中心部でのライドシェアのUberとLyftの費用を40ドルまで肩代わりし、無料または低価格で安全に帰路につけるようにする。

FOXニュースは、パク氏がニューヨークでの貧乏な学生時代を経験していた、と背景を報じている。経済的に余裕がない人々が危険な地下鉄または徒歩での帰宅を余儀なくされているニューヨークの実情を、誰よりも彼女自身が痛感していたようだ。

パク氏のポケットマネーで立ち上げたこの企画はインスタグラム上で反響を呼び、これまでに賛同者から計12万5000ドル(約1360万円)以上の寄付が押し寄せた。これまでの実績として、累計1100人以上の年配者たちを安全に帰宅させている。現時点で必要とされる支援のおよそ5倍の額の善意が寄せられており、寄付の受付を一時停止するほどの関心を呼んでいる。

New York Woman Raises $125,000 For Safer Ride Sharing As Anti-Asian Attacks Spike | NBC News NOW


消費行動を通じて支援組織をサポートしようという呼びかけも活発だ。米ライフスタイル誌の『ロブ・レポート』は、収益金の一部がアジア系支援団体に贈られるアイテムを特集している。アーティストとのコラボTシャツや差別撤廃のメッセージ入りマスクなどのウェア類を購入することで、支援の意思を表明し、経済的なサポートにもつなげることができる。

同誌は「数十年という長きにわたり黙認され、アメリカ社会のかけがえのないメンバーを分離してきたカジュアルな差別の形」があると指摘し、メッセージ性の高い衣服を着用することで、これらを容認しないというメッセージを目に見える形で示すことができると述べている。

一連のヘイト事件は、パンデミック発生時にトランプ政権が「中国ウイルス」などと連呼したことが発端だと言われる。米政府のポスト新設から草の根レベルの活動に至るまで、パンデミック以前の平穏を取り戻すための努力が続く。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ギャップ、8─10月は既存店売上高・利益が市場予

ビジネス

ビットコインの弱気派優勢に、年末の9万ドル割れ確率

ワールド

米下院委員長、中国への半導体違法輸出受け法案の緊急

ワールド

ボスニアと米国、ロシア産ガスに代わるパイプライン建
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 8
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 9
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中