最新記事

少数民族

中国の弾圧で人権を踏みにじられるウイグル女性たち 悲惨な虐待の実態と、必死の抵抗

UIGHUR WOMEN AT THE FORE

2021年4月13日(火)14時47分
シミナ・ミストレアヌ(フリーランスジャーナリスト)

中国政府が外国人記者や外交官に対して収容所への見学や視察を禁止しているため、収容所から解放された人々の証言を客観的に検証することはできない。だが女性たちの証言は、解放された他の人々の証言や、ウイグル自治区の出生率低下、中国が「イデオロギー的ウイルス」と呼ぶ少数民族の排除を目的とした同自治区の政策と一致している。

もちろん中国政府は、こうした告発内容を強く否定している。子宮内避妊器具の装着や不妊手術、中絶手術の強要といった話は「悪意に満ちたスキャンダラスな意見」だと、自治区政府は一蹴している。

だが女性たちの証言によると、中央政府の指示を勝手に解釈した地方政府の当局者が身体的措置を強要している可能性がある。例えばカザフスタンに移住して結婚したグルジヤ・モグディンの場合だ。

17年9月、モグディンが新疆に帰郷すると、地元の警察から子供たちも連れてきて住民登録をしろと命じられた。この時点で彼女はパスポートも没収された。同年12月25日の深夜、警官が来て「検査」と称してモグディンを病院に連れていった。そこで妊娠が判明した。

すると当局は、モグディンに中絶を迫った。拒否し続けたモグディンは18年1月、兄弟と一緒に当局に呼び出され、中絶しなければ兄弟が責任を問われると言われた。やむなく、彼女は命令に従った。

数カ月後、夫がカザフスタン政府に介入を求め、モグディンはカザフスタンに戻ることを許された。だが兄弟は収容所に連行され、1年ほどつらい思いを強いられた。

新疆ウイグル自治区に暮らす女性たちは何年も前から、漢民族への同化を迫る中央政府のキャンペーンに抵抗してきた。しかし共産党政権の圧力は高まるばかりで、11年にはイスラムの戒律で女性に求められるベールや伝統的な長いドレスの着用を禁ずるキャンペーンが開始された。髪を編んだり伸ばしたりするのは時代遅れだという洗脳教育も行われた。「女性が顔を隠せば過激派扱いだ」と言うのは、アメリカの人権擁護団体「ウイグル人権プロジェクト」のズバイラ・シャムセデンだ。

210406p18_UGL_11.jpg

人権団体のズバイラ・シャムセデン MUNAWWAR ABDULLA FOR FOREIGN POLICY


中国政府はウイグル人の同化を一段と深化させるために「ウイグル人女性の完全な再設計」を目指していると、彼女は訴える。例えば、ウイグル人を含む少数民族の女性を漢民族の男性と強制的に結婚させることだ。おまえの兄弟や父親を収容所から解放してほしければ、漢人の男性と結婚しろ。そういう論法だ。

もっと露骨な政策もある。夫が収容所送りとなった少数民族の家庭に漢民族の男性が入り込み、その女性を妻とし、家庭を乗っ取るなどの政策だ。既に100万件以上の実績があるとされ、中国政府はこれを民族同化の有効な手段と認めている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送フーシ派がイスラエル攻撃、イエメンの親イラン武

ワールド

再送-UAEのアブダビで5人負傷、火災も発生 ミサ

ワールド

タイ新政権、来週発足へ アヌティン首相が表明 

ビジネス

中国の大手国有銀3行、25年の利益ほぼ横ばい 不動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?...「単なるホラー作品とは違う」「あの大作も顔負け」
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のSNS動画が拡散、動物園で一体何が?
  • 4
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 5
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 6
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 7
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 8
    ウィリアム皇太子が軍服姿で部隊訪問...「前線任務」…
  • 9
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 10
    「酷すぎる...」ショッピングモールのゴミ箱で「まさ…
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 9
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 10
    「カメラの目の前」で起きた爆発の瞬間...取材中の記…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中