最新記事

アジア

「日本のお金で人殺しをさせないで!」ミャンマー国軍支援があぶり出した「平和国家」の血の匂い

2021年4月9日(金)17時52分
永井浩(日刊ベリタ)

これに対して国際協力局国別開発協力第一課の森祐一郎首席事務官は、「加藤官房長官は記者会見で『新規ODAを止める』とは申し上げていない。『現時点で早急に判断すべき案件はないと聞いています』と言っている」と答えた。

私自身は集会に参加しなかったが、参加者の報告に目をとおしながら、日本国憲法を読み直してみた。

日本国憲法の「平和」の理念とミャンマーの問題

戦後日本の屋台骨となっているこの憲法が「平和憲法」と称されるのは、第9条で「戦争の放棄」をうたい、国際紛争の解決手段としての武力行使の否定と戦力の不保持を誓っているからであるが、憲法はもうひとつ、平和とは何かを前文に記している

「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」

「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓う」

ミャンマーの現状は、軍事政権のもとで長年、専制と隷従を強いられ、恐怖と欠乏に苦しんできた国民が、それを脱して平和で豊かな国づくりをめざして民主主義を守ろうと血を流しながら闘うすがたを世界にしめしている。だとしたら、私たちの平和国家は全世界の国民とともに、ミャンマーの人びとがもとめる理想と目的の達成に全力をあげて協力することが、みずからを国際社会において名誉ある地位に導いていくことにもつながるはずである。

ところが日本政府は、憲法の精神に忠実であろうとするどころか、それに逆らう選択をしている。専制と恐怖の政治をつづけようとする勢力を延命させてきた過ちを反省して、クーデターで民意を代表する政権を破壊した国軍に対して、国際社会と歩調をあわせて毅然たる姿勢を打ち出せないままである。

では、各政党の対応はどうか。

自民党外交部会などは2月5日の合同会合で、軍がアウンサンスーチー国家顧問らを拘束し、民主化プロセスに逆行する行動をとっていることに「重大な懸念を表明し、強く非難する」決議を了承、茂木敏充外相に提出することを確認した。決議は日本がミャンマーと強固な関係を築く一方、米国のバイデン政権や欧州が人権や民主主義を重視する姿勢を示していることに触れ、「わが国に課せられた役割と国際社会からの期待は極めて大きく、日本外交にとって重大な局面を迎えている」と強調した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中