最新記事

テクノロジー

「お役所仕事」を許す時代はもう終わり 行政のデジタル化は世界でこんなに進んでいる

EMPOWERED ID

2021年4月30日(金)12時22分
マリ・パンゲストゥ(世界銀行専務理事)
デジタルID(イメージ)

vektorjunkie-iStock

<コロナ下で支援を必要とする市民サービスの向上には、包摂と信頼を備えたデジタル化のシステム設計が不可欠>

新型コロナウイルスの感染拡大によって、弱者にさまざまな支援を提供すべき政府の能力が試されている。

世界各国が、コロナ禍に対応する社会的な保護措置を計画・実施しているが、多くの国では、既存の福祉・社会保障関連制度がカバーしていない労働者の特定に手こずっている。ソーシャルディスタンスの確保や自主隔離が求められる今、問題への対応は一層厄介だ。

それでも一部の国では、「デジタルID」システムをうまく活用して問題解決に取り組んでいる。このシステムを使えば、当局がネット経由で対象を確実に特定し、貧困層や移民労働者などの弱者に緊急の援助資金を迅速に支給することができる。

例えばチリではデジタルIDシステムによって、新たに社会福祉プログラムの対象となる多くの人たちの事前登録が可能になった。登録者は自分が受けられる支援をオンラインで確認し、必要に応じて申請できる。

タイでは、コロナ禍で苦しむ労働者向けの給付金を2800万人以上が申請した。政府はデジタルIDを使うことで、他の制度から援助を得られる人を除外することができた。

インドでは、個人口座をデジタルIDにリンクするなどの施策を講じた。この結果、全ての人に金融サービスの利用を可能にする「金融包摂プログラム」を通じ、2億人超の女性に援助金を迅速に給付できた。

だがデジタルIDシステムは、単独では弱者救済の特効薬にはならない。システムを生かすには、デジタルなインフラに多額の費用をかけずにアクセスできる環境が要る。

デジタルIDは、他の重要なアプリやシステム構築の基盤となる。リモートの取引が可能になるから「デジタル決済」も利用できるようになり、個人情報を保護する「データガバナンス」の改善も期待できる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英CPI、8月は前年比+3.8% 予想と一致

ビジネス

午後3時のドルは146円半ばで上値重い、米FOMC

ワールド

旧統一教会の韓鶴子総裁を聴取、前大統領巡る不正疑惑

ワールド

香港長官が政策演説、経済と生活の向上に注力 金取引
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中