最新記事

テクノロジー

「お役所仕事」を許す時代はもう終わり 行政のデジタル化は世界でこんなに進んでいる

EMPOWERED ID

2021年4月30日(金)12時22分
マリ・パンゲストゥ(世界銀行専務理事)

デジタルID、デジタル決済、データガバナンスの3つが組み合わされば、強力なインフラになる。例えばエストニアやシンガポールでは、政府や企業のサービスにオンラインでアクセスできる高度な「デジタル・エコシステム」の構築につながり、新型コロナが引き起こした経済的混乱をいくらかは緩和できている。

市民が頼るシステムを築く

デジタル化が進む今、データ保護の思想は大きく変化している。データの漏洩や悪用などの事例が関心を集め、プライバシー侵害の脅威に対する意識はさらに高まった。デジタルIDシステムには個人情報の漏洩リスクはあるが、慎重にシステムを設計すれば責任あるデータ利用を促すことができる。

デジタルIDシステムの設計には、「包摂」と「信頼」を念頭に置く必要がある。包摂とは全ての人がデジタルIDを利用し、それを通じて該当する支援を受けられる状態になることを意味する。市民が頼れるシステムをつくることも重要で、そのためには透明性と信頼が必要だ。

優れたデジタルIDシステムは政府や企業の運営能力を高めるばかりでなく、国民を守り、利益をもたらすものだ。現に世界各国で、地域の状況を反映したさまざまなモデルが登場している。

コロナ禍は、デジタルIDシステムを導入する緊急性を浮き彫りにした。そもそも世界には公的なIDを持たない人が10億人もいる(その半数がアフリカ)。各国が目指すポストコロナの「より良い復興」は、責任ある姿勢でデジタル経済の活用に乗り出すチャンスでもある。

どんなモデルを選ぶにしろ、各国政府は個人情報保護や社会的包摂、信頼関係を最大化するデジタルIDシステムを構築することで、人々の生活を変えることができる。

©Project Syndicate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、ガリウムやゲルマニウムの対米輸出禁止措置を停

ワールド

米主要空港で数千便が遅延、欠航増加 政府閉鎖の影響

ビジネス

中国10月PPI下落縮小、CPI上昇に転換 デフレ

ワールド

南アG20サミット、「米政府関係者出席せず」 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 2
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 3
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった...「ジャンクフードは食べてもよい」
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 9
    「豊尻」施術を無資格で行っていた「お尻レディ」に1…
  • 10
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中