「息子は若く見えるし、若い女性なら孫を2人は産めるから」代理婚活に励む親たち
これらの問題発言を口にした政治家の多くが、60~70代、つまり代理婚活に熱心な30~40代の親世代。「女性は結婚して子どもを産むのが当たり前」という価値観の中にどっぷり生きてきた人が多い。時代の流れを理解しようとせず、結婚しない人生を簡単に否定する。(139ページより)
つまり当人たちにとってそれは失言ではなく、「よかれと思って発した言葉」なのだろう。しかし当然ながら、結婚して子どもを産むことだけが「正しい人生」ではない。結婚とは、断じてそういうものではない。
読みながら思い出したのは、中学生の頃、近所の電気屋の親父さんから聞いた結婚観だ。私が「どうして結婚しようと思ったの?」と尋ねると、彼は迷わずこう答えたのだ。
「そりゃお前、この女と一緒になったら、さぞ楽しかろうと思ったからだよ」
この言葉は、私自身の結婚観にもなっている。だから思うのだ。結婚とはそういうものなのだと。
冒頭で触れたように、確かに相手を探すのが大変な時代かもしれない。そのことについては、大変だろうなと思う。
だが同時に、親がどう、産まれてくる赤ん坊がどうと言う以前に、当事者同士が日々の幸せを感じることができそうな相手を、自分の感覚で見つけ出してほしいものだとも切実に感じるのである。
『ルポ 婚難の時代
――悩む親、母になりたい娘、夢見るシニア』
筋野 茜、尾原佐和子、井上詞子 著
光文社新書
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[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は他に「ライフハッカー[日本版]」「東洋経済オンライン」「WEBRONZA」「サライ.jp」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。ベストセラーとなった『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)をはじめ、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)など著作多数。新刊は、『書評の仕事』(ワニブックス)。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。