中国でホッキョクグマ・ホテル開業も、劣悪な待遇に世界がバッシング
各国から非難の声があがった「ホッキョクグマ・ホテル」...... The Animal Reader-YouTube
<中国・ハルビンに、絶滅危惧種のホッキョクグマを見世物にしたホテルが開業した。現地紙が「世界初」と大々的に報じる一方、海外から強い反感を買っている>
問題のホテルは中国北東部、ハルビン市郊外を流れる川の中洲に建設された。太陽島と名付けられたこの中洲は巨大な公園として整備されており、行楽地として人気だ。公園内の施設のひとつに、ハルビン極地館と呼ばれる水族館がある。ホッキョクグマ・ホテルは、この水族館に併設する形で3月12日にオープンした。
ホテルは一見、ファミリー層をターゲットにした楽しげな場所のようにも思える。ロビーはガラス張りの展望スペースとなっており、ホテル中央に設けられたホッキョクグマの展示スペースを望む。前面と足元の強化ガラス越しに、2頭のホッキョクグマが歩いたりプールで泳いだりしている様子を観察できる趣向だ。
客室もユニークだ。宿泊フロアは3階まであり、21室全室が展示スペースを囲むように設置されている。宿泊客は、いつでもホッキョクグマを見下ろし観察すことができるというわけだ。
中国共産党傘下のチャイナデイリー紙は開業に先駆け、ホテルについて誇らしげに報じている。「世界初のホッキョクグマ・ホテルが金曜、黒竜江省ハルビン市にオープンする。客たちは客室から強化ガラス越しにクマを見ることができる」「ホッキョクグマが常に付き添い、ホテルはユニークで忘れられない体験を宿泊客に提供する」と述べ、他に例を見ない宿泊体験を強調している。しかし華々しく伝える同紙をよそに、海外の報道機関は眉をひそめる。
愛護団体が警鐘 中国国内からも疑念の声
クマたちが長時間を過ごす展示スペースは、雪を模して白く塗っただけの床と小さなプールから成る簡素なものだ。四方から人間に見られながら、太陽の当たらない人工照明のみのこの空間で一日の大部分を過ごす。ホテル側によると屋外にもスペースがあり、客室に囲まれた屋内のスペースが全てではないという。しかし、外に出られるのは気候条件が揃ったときのみだ。
気候変動の影響で個体数が減少しているホッキョクグマは、国際自然保護連合によって絶滅危惧種に指定されている。希少な種を貧相な環境で飼育しているとあって、中国国外からホテルへの非難が殺到した。
動物擁護団体のPETAはロイターに対し、ホッキョクグマは北極にいるべき存在であり、ホテルで飼うなど言語道断だとの立場を表明している。米CNNも同じ内容を取り上げ、ホテルは満室となったが批判が集中していると報じた。
オーストラリアの大手ニュースサイト『ニュース・コム・エーユー』も、批判的な報道姿勢だ。PETAのコメントを取り上げ、「PETAは(ホテルの)顧客に対し、動物の不幸から利益を得るこのホテルと他のあらゆる施設から距離を置くように勧めます」との立場を伝えている。ホッキョクグマは本来1日18時間ほど活動的に過ごし、行動範囲は数千キロにも渡る。ガラスの囲いの中で飼育するのは適切でないとPETAは訴える。