最新記事

ワクチン

アストラゼネカ社ワクチン推奨年齢枠を「65歳以下」から「55歳以上」と大きく方針転換:フランス

2021年3月31日(水)16時21分
冠ゆき

フランスのワクチン接種年齢の大きな方針転換...... REUTERS/Kai Pfaffenbach

<3月19日、フランスでは15日から中断していたアストラゼネカ社のワクチン接種を再開したが、これまで65歳以下とされてきた接種対象年齢を、55歳以上と大きく方針を転換した...... >

アストラゼネカ社ワクチンの一時中断と再開

3月11日のデンマークを皮切りに、欧州では少なくとも12か国がアストラゼネカ社のワクチン接種を一時的に中断した。ノルウェーなどで血栓の副反応が疑われる例が出たことが理由だ。これと並行して、オーストリア、エストニア、リトアニア、ラトビア、ルクセンブルクでは、副反応が疑われる同社ワクチンのロットABV5300についてのみ接種を一時的に中断。また、欧州以外では、タイ、インドネシア、コンゴが同社ワクチンの接種開始を遅らせた(フランスアンフォ、3/11初出)。

そのため欧州医薬品庁(EMA)が調査に乗り出したが、3月18日アストラゼネカ社のワクチンは「安全かつ効果的」という見解を発表した(ユーロニュース, 3/18)。また、当初より接種中断に憂慮を示していたWHOもEMAの見解を肯定。

これを受け、3月19日にはドイツ、フランス、イタリア、ブルガリア、スロベニア、22日にはスペイン、ポルトガル、オランダが同ワクチンの接種を再開している。接種の一時中断で広がった国民の不安を払拭する狙いもあり、フランスでは19日にカステックス首相が同ワクチンを接種し、ドイツのメルケル首相やイタリアのドラギ首相も近々接種するつもりだと発表している(ル・モンド紙, 3/19) 。

国による対応の違い

ただし、ノルウェーとスウェーデン、デンマークはなおも慎重な姿勢を崩しておらず、接種再開は、血栓問題についてより詳しい調査を経てからとした。またこれまで接種を中断していなかったフィンランドは、同社ワクチン接種を少なくとも29日まで中断すると決めている。

反面、当初より同社ワクチンを積極的に接種しているイギリスは、EUの慎重さをいささか冷ややかな目で見ているようだ。BBCは、ヨーロッパ全土で接種した1700万人のうち、報告された血栓などの問題が37件であることを挙げ、これは、ワクチンを受けてない場合の血栓問題発生率より低いと指摘している。

年齢制限を真逆に変えたフランス

上述の通り、EMSの見解を受けフランスでは3月19日から同社ワクチン接種を再開したが、接種対象の年齢層を設定方針を大きく変更した。

これまでは、高齢者の治験データが十分でないことを理由に、フランスではアストラゼネカ社のワクチンは65歳以下にのみ接種されていた。ところが3月19日付でフランス高等保険機構(HAS)は「55歳以上に接種」と大きく方向転換したのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 6
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 9
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中