最新記事

韓国

4月1日、改正種苗法が施行 韓国の無断栽培増加が背景にあった

2021年3月26日(金)15時38分
佐々木和義

aTはシャインマスカットと合わせてリンゴのフジの輸出を促進している。フジは1930年代後半、青森県の農林省園芸試験場(現・農研機構)東北支場で育成された。試験場の移転に伴って原木を岩手県盛岡市に移植した後、62年に登録されたが国外登録は行っていない。

フジは、日本の収穫量の半数を占めるほか、米国、韓国、中国などでも「富士」の名前で生産されている。中国産より美味しく日本産より安い韓国産フジはシャインマスカットと同様、ベトナムをはじめとするアジアで人気があり、日本の輸出を阻んでいる。

出荷できなくなった済州島のミカン農家

いっぽう、こうした事例もある。2018年12月、済州島のミカン農家に衝撃が走った。「みはや」と「あすみ」、920トンを出荷できない事態に陥ったのだ。

済州島はミカンの産地として知られている。1964年に島を訪問した朴正熙大統領が柑橘栽培を奨励、日韓基本条約を締結した65年から増殖事業に取り組み、70年代前半には済州島農家の91%が柑橘類を栽培するまでに成長した。

済州島のミカンは94%以上が日本品種で、多くが無断栽培だ。デコボンの名で知られるシラヌイは「ハンラボン(漢拏峰)」と名付けられ、島を代表する名産となっている。

デコポンは国際条約による登録期限を過ぎているが、「みはや」と「あすみ」は2012年3月の登録品種で、2018年1月に登録を申請した韓国国立種子院から臨時保護権が認められた。

韓国農林畜産食品部と農協は、臨時保護権は種子と苗木が対象で、果実には及ばないという解釈を下して2品種の栽培を促進、300余りの農家が取り組んだ。

韓国では外国の品種保護登録は、通常、臨時保護権の2年4か月後に完了する。収穫を直前に控えた18年12月、当局が、保護登録を終える2年後に植物新品種保護法違反の刑事罰とロイヤリティが科されると農家に告知し、農協も「国際紛争や訴訟問題になる懸念がある」としてスーパーや市場での販売を禁止した。無断栽培を続けてきた韓国農業は、大きい代償を支払うことになったのである。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は小反発、クリスマスで薄商い 値幅1

ビジネス

米当局が欠陥調査、テスラ「モデル3」の緊急ドアロッ

ワールド

米東部4州の知事、洋上風力発電事業停止の撤回求める

ワールド

24年の羽田衝突事故、運輸安全委が異例の2回目経過
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中