最新記事

米中対立

バイデンが提唱する対中連携を拒否 シンガポールが中国と海上演習を実施

Singapore Holds Naval Drill With China, but U.S. Remains Top Security Partner

2021年2月26日(金)14時40分
ジョン・フォン

安全保障の専門家らは、今回の中国とシンガポールの海上合同演習を、中国が東南アジア諸国との軍事協力をさらに強化する兆候と見ている。

この演習の2週間前には、アントニー・ブリンケン米国務長官がシンガポールのビビアン・バラクリシュナン外相との電話会談を行い、アメリカとシンガポールの安全保障上、経済上の関係をあらためて確認したばかりだ。

中国とシンガポールは2019年に防衛交流と安全保障協力の合意(ADESC)を締結。これに基づいて両国の軍事演習が今後増加することも考えられるが、研究者のコーは今回の演習は「何ら新しいものではない」と言う。

今回の演習は「基本的な日程」を消化しただけで、「中国との良好な関係を維持するシンガポールの長期的な立場」に沿ったものだと、コーは見ている。

中国封じ込めは「冷戦型」

また、中国側はシンガポールとの軍事演習を拡大したいと望んでいるが、現状での両海軍の交流はまだ「初期段階」のものだという。シンガポールは昨年12月、米軍と合同の海上協力即応訓練(CARAT)を実施したが、その際に行われた「戦闘の要素」を含むより複雑な演習は中国との合同演習では行われなかった。

一方、アメリカでは中国が今後数十年間、アメリカの国益にとって最大の脅威になるという懸念が超党派の合意事項となっている。これを受けてバイデン政権は、中国の敵対的な経済政策や地政学的な拡大主義に対抗する「民主主義国の連携」を提唱している。

しかしシンガポールのリー首相は、バイデン政権と中国の現政権の軋轢の可能性からは即座に距離を置いた。

「多くの国が、中国を念頭に置いて対抗する連携には参加したくないと思う」と、昨年11月に北京で開催されたイベントでリーは発言した。「中国とビジネスをしたいと思う国があるからだ。そのような『冷戦型』の連携は、あり得ないと思う」

研究者のコーも、「中国『封じ込め』のどのようなスキームの一画としても、シンガポールは絶対に見られたくない」と分析する。「それによって外交政策の根本の前提が、深刻なダメージを被るからだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円が軟化、介入警戒続く

ビジネス

米国株式市場=横ばい、AI・貴金属関連が高い

ワールド

米航空会社、北東部の暴風雪警報で1000便超欠航

ワールド

ゼレンスキー氏は「私が承認するまで何もできない」=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中