慰安婦問題で韓国が公的議論を受け入れるとき
Comfort Women Groupthink
ソーは同書で、元慰安婦だという李容洙(イ・ヨンス)が92年に記した最初の証言にも触れている。それによると、李は16歳の時に友人と地元の韓国・大邱から家出し、台湾にあった民営の慰安所にたどり着いた。
しかし、補償要求運動の顔になった李は07年には、自宅から強制連行されたと公の場で証言。夜中に押し入ってきた日本軍兵士に力ずくで連れて行かれたと述べた。
より広く知れ渡っていながら、論議があまりに不十分な事実もある。多くの元慰安婦や遺族が補償の受け取りに意欲的だったことだ。
15年の日韓合意に基づき、日本政府が10億円を拠出して設立された財団からは、韓国政府に登録された元慰安婦で合意時点で生存していた47人のうち35人、および遺族58人が補償金の支給を受けた。
94~95年には、政府が認定する存命中の元慰安婦207人のうち61人が、日本のアジア女性基金の償い金支給の対象になった。活動団体が彼女たちをバッシングしなければ、人数はさらに増えたかもしれない。だが韓国政府は、受け取りを拒否するよう経済的圧力をかけた。
04年には元慰安婦33人から成るグループが、補償を受け入れた者を正義連が「おとしめ、辱めた」と批判した。
おそらく最も当惑させられるのは、韓国では日本による植民地支配以前も以降も、国家主導の下で性的労働が行われていた歴史への認識がほぼ不在であることだ。
「謝罪と撤回」を求めずに
高麗王朝時代(918~1392年)と李氏朝鮮・大韓帝国時代(1392~1910年)には、大勢の女性が朝貢品の「貢女」として中国に送られた。太平洋戦争終結以降は政府の了解(70年代には、その奨励と監督)の下で、推計25万~50万人が米軍兵士の「慰安」に当たった。
現代の韓国では、性的労働従事者が世論や政府の同情の対象になることは皆無に近く、移民の場合は多くが強制送還される。韓国の性的労働関連の法律は、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で特に厳罰主義的で、大半の労働者は闇で働くことを強いられる。少数のふしだらな女性だけが、性的労働に自ら従事するという言説が社会を支配しているためだ。
逆説的ではあるが、日本も韓国にとっての手本だ。日本には、自国の欠点を論じる活動家や学者が数多くいる。ラムザイヤーの論文に対して、反射的に謝罪と撤回を要求している人々は自分自身と韓国、そして人権コミュニティーのために、自らの根強い信条を論じ、見直す機会を歓迎したほうがいい。
本稿の目的は、ラムザイヤーの論文を支持することではない。筆者らは学者として、韓国在住者として訴えたい。実証研究・分析によってラムザイヤーの主張を確かめ、正当性に基づいて異議を唱えることが重要なのだ、と。
From thediplomat.com
<本誌2021年3月2日号掲載>
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