最新記事

ミャンマー

ネットでつながる、ミャンマーの抵抗運動は進化を遂げた

Can Myanmar’s Protesters Succeed?

2021年2月17日(水)16時30分
コートニー・ウィテキン(社会人類学者)

3日目になると、若者たちは親や祖父母の時代にはなかったツールや情報を武器に、オンラインで抗議運動を開始した。さらに若い活動家は、国境を越えてSNSでつながる民主化連帯運動「ミルクティー同盟」を活用し、市民が3本指を抗議の印として掲げている写真を投稿した。昨年タイで起きた抗議運動でおなじみになったポーズだ。

87の市町村に広がった新たな抗議運動は過去のストに似た点もあるが、手法と目的は異なっている。人々はオンラインを活用しているし、要求の内容はNLDが最初に求めたものより幅広い。

ヤンゴン大学の学生連盟は、完全な民主主義と、軍事政権下の2008年に軍が起草した憲法の廃止を断固として求めている。少数民族のラカイン人やカレン人のデモ参加者は自治権拡大と連邦主義体制を訴え、LGBT(性的少数者)の権利を唱える活動家はあらゆる市民のための運動を模索している。こうした要求はクーデーターだけでなくNLDの現状さえ批判し、過去と決別しようというものだ。

歴史は繰り返す。軍の戦略も同じかもしれない。広がりを見せる抗議運動が暴力的な形で鎮圧されるのも時間の問題とみられる。軍はなりふり構わぬ逮捕戦術を取り、工作員を潜入させるなど、抵抗運動を制圧するための昔ながらの手法を取り続けている。

一方で軍は、国連安全保障理事会がクーデターで拘束された市民の即時解放を求めたことを受け、国際社会の圧力を必死にかわそうとしている。欧米諸国がミャンマーへの制裁措置を検討するなか、国軍トップのミンアウンフライン総司令官は2月8日の演説で、ミャンマーの経済回復と、数十億ドル規模の外国直接投資の維持について懸念を表明した。

今回の抗議運動には全く新しい要素もあれば、古くからの手法を「改良」したものもある。例えばデモ参加者たちは、ネットを利用することで個人情報を当局に知られるのを避けるため、デジタルセキュリティーについての手引を共有している。

鍋をたたいて抗議の意思を示す行動は、民主化運動を行った前の世代にとっては最後の手段だった。独裁体制を長年にわたって経験し、1988年の民主化運動が鎮圧されて多くの死傷者が出た後に、鍋たたきが始まった。

しかし今の若者たちは、まず鍋をたたくことから始めた。新型コロナウイルスに関するさまざまな規制や夜間外出禁止令、軍に暴力を振るわれる脅威を巧みにくぐり抜けながら、彼らは鍋をたたいた。

6日も数万数十万の若者が街頭に繰り出した。インターネットが遮断される前に最後のメッセージを投稿した人も多かった。「1988年に戻るわけにはいかない」と、ある市民は書いた。「闘うんだ。自分たちの未来のために」

From Foreign Policy Magazine

<本誌2021年2月23日号掲載>

ニューズウィーク日本版 イラン革命防衛隊
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月24号(3月17日発売)は「イラン革命防衛隊」特集。イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

台湾・鴻海、第4四半期は2%減益 売上高見通し良好

ワールド

韓国でアクティビズム浸透、国内勢も参加=ヘッジファ

ワールド

イスラエル軍、レバノン南部で「限定的」地上作戦 ヒ

ワールド

ドバイ空港付近の無人機攻撃の火災鎮火、運航は徐々に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目のやり場に困る」衣装...「これはオシャレなの?」
  • 3
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングアップは「2セット」でいいのか?
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 6
    機内で「人生最悪」の経験をした女性客...後ろの客の…
  • 7
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    ぜんぜん身体を隠せてない! 米セレブ、「細いロープ…
  • 10
    50代から急増!? 「老け込む人」に共通する体の異変【…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中