ネットでつながる、ミャンマーの抵抗運動は進化を遂げた
Can Myanmar’s Protesters Succeed?
3日目になると、若者たちは親や祖父母の時代にはなかったツールや情報を武器に、オンラインで抗議運動を開始した。さらに若い活動家は、国境を越えてSNSでつながる民主化連帯運動「ミルクティー同盟」を活用し、市民が3本指を抗議の印として掲げている写真を投稿した。昨年タイで起きた抗議運動でおなじみになったポーズだ。
87の市町村に広がった新たな抗議運動は過去のストに似た点もあるが、手法と目的は異なっている。人々はオンラインを活用しているし、要求の内容はNLDが最初に求めたものより幅広い。
ヤンゴン大学の学生連盟は、完全な民主主義と、軍事政権下の2008年に軍が起草した憲法の廃止を断固として求めている。少数民族のラカイン人やカレン人のデモ参加者は自治権拡大と連邦主義体制を訴え、LGBT(性的少数者)の権利を唱える活動家はあらゆる市民のための運動を模索している。こうした要求はクーデーターだけでなくNLDの現状さえ批判し、過去と決別しようというものだ。
歴史は繰り返す。軍の戦略も同じかもしれない。広がりを見せる抗議運動が暴力的な形で鎮圧されるのも時間の問題とみられる。軍はなりふり構わぬ逮捕戦術を取り、工作員を潜入させるなど、抵抗運動を制圧するための昔ながらの手法を取り続けている。
一方で軍は、国連安全保障理事会がクーデターで拘束された市民の即時解放を求めたことを受け、国際社会の圧力を必死にかわそうとしている。欧米諸国がミャンマーへの制裁措置を検討するなか、国軍トップのミンアウンフライン総司令官は2月8日の演説で、ミャンマーの経済回復と、数十億ドル規模の外国直接投資の維持について懸念を表明した。
今回の抗議運動には全く新しい要素もあれば、古くからの手法を「改良」したものもある。例えばデモ参加者たちは、ネットを利用することで個人情報を当局に知られるのを避けるため、デジタルセキュリティーについての手引を共有している。
鍋をたたいて抗議の意思を示す行動は、民主化運動を行った前の世代にとっては最後の手段だった。独裁体制を長年にわたって経験し、1988年の民主化運動が鎮圧されて多くの死傷者が出た後に、鍋たたきが始まった。
しかし今の若者たちは、まず鍋をたたくことから始めた。新型コロナウイルスに関するさまざまな規制や夜間外出禁止令、軍に暴力を振るわれる脅威を巧みにくぐり抜けながら、彼らは鍋をたたいた。
6日も数万数十万の若者が街頭に繰り出した。インターネットが遮断される前に最後のメッセージを投稿した人も多かった。「1988年に戻るわけにはいかない」と、ある市民は書いた。「闘うんだ。自分たちの未来のために」
<本誌2021年2月23日号掲載>
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