最新記事

ヘルス

長寿日本一の長野県、秘訣は「適度な毒」 県民が実践する病気知らずの食事法とは

2021年2月15日(月)11時50分
古川 哲史(医学博士・東京医科歯科大学副学長) *PRESIDENT Onlineからの転載

長野県は白菜・レタスなどの生産量は全国1位、キャベツやトマトなども全国トップクラスです。

一方、野菜の摂取量も、男女とも全国第1位です。1日当たりの野菜摂取量の全国平均は301gに対して、長野県は379gです。一番少ない徳島県は245gなので、長野県の野菜摂取量はその1.5倍です。

こと野菜に関しては、地産地消が実現されているのです。

地産地消の赤ワイン、味噌、キノコ

ポリフェノールを含み、心臓病や、特に動脈硬化によいことが知られている赤ワインについても、長野県は地産地消の割合が高いことがわかっています。

ワインの原料であるブドウ、そしてワインの生産量共に、第1位は山梨県で、長野県はどちらも2位なのですが、山梨県は生産量の98.5%が出荷されていて、自県ではほとんど消費されていないのです(わずか1.5%)。

一方、長野県では生産量の12%が自県で消費されています。決して多い数字とは言えませんが、山梨県に比べると長野県は、ワインの地産地消の割合が8倍も高いのです。

それから、長野県には生産量全国第1位の食品が、野菜の他にもいくつかありますが、中でもダントツの全国第1位の食品が、発酵食品の味噌です。「信州味噌」は日本の全生産量の約半分を占めています。

さらにもう一つ、生産量全国第1位の食品なのが、キノコです。こちらは全国生産量の約3分の1を占めます。

味噌もキノコも、生産量だけでなく、人口当たりの消費量も長野県が全国第1位です。

中でもキノコの消費量は、全国平均の1.4倍、最も消費の少ない沖縄県の2.5倍近くとなっています。ここでも長野県は地産地消を実現できているのです。

book20210215.pngなぜ味噌とキノコが身体によいかといえば、ポリアミンと呼ばれる物質を豊富に含むからです。このポリアミンは健康によく、特に老化防止に効果がある事が、最近、あきらかになっています。

こうした「長野モデル」の特徴から学べるものは多いのですが、一番大事なのは、吉澤先生が説いて回った「自分で自分の健康を守る意識を持つ」、つまりひとりひとりが健康に対して、自主的に取り組むことです。

病気になってから病気を治すのではなく、そもそも病気にかからないための生活について、日ごろから気を配る、これに尽きるのかもしれません。

古川哲史(ふるかわ・てつし)

医学博士・東京医科歯科大学副学長
1957(昭和32)年、東京都生まれ。医学博士。1989年東京医科歯科大学大学院医学研究科博士課程修了。同大学副学長。著書に『血圧と心臓が気になる人のための本』『心房細動のすべて 脳梗塞、認知症、心不全を招かないための12章』『心臓によい運動、悪い運動』(いずれも新潮新書)などがある。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg




今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

10月全国消費者物価(除く生鮮)は前年比+2.3%

ワールド

ノルウェーGDP、第3四半期は前期比+0.5% 予

ビジネス

日産、タイ従業員1000人を削減・配置転換 生産集

ビジネス

ビットコインが10万ドルに迫る、トランプ次期米政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中