長寿日本一の長野県、秘訣は「適度な毒」 県民が実践する病気知らずの食事法とは
長野県は白菜・レタスなどの生産量は全国1位、キャベツやトマトなども全国トップクラスです。
一方、野菜の摂取量も、男女とも全国第1位です。1日当たりの野菜摂取量の全国平均は301gに対して、長野県は379gです。一番少ない徳島県は245gなので、長野県の野菜摂取量はその1.5倍です。
こと野菜に関しては、地産地消が実現されているのです。
地産地消の赤ワイン、味噌、キノコ
ポリフェノールを含み、心臓病や、特に動脈硬化によいことが知られている赤ワインについても、長野県は地産地消の割合が高いことがわかっています。
ワインの原料であるブドウ、そしてワインの生産量共に、第1位は山梨県で、長野県はどちらも2位なのですが、山梨県は生産量の98.5%が出荷されていて、自県ではほとんど消費されていないのです(わずか1.5%)。
一方、長野県では生産量の12%が自県で消費されています。決して多い数字とは言えませんが、山梨県に比べると長野県は、ワインの地産地消の割合が8倍も高いのです。
それから、長野県には生産量全国第1位の食品が、野菜の他にもいくつかありますが、中でもダントツの全国第1位の食品が、発酵食品の味噌です。「信州味噌」は日本の全生産量の約半分を占めています。
さらにもう一つ、生産量全国第1位の食品なのが、キノコです。こちらは全国生産量の約3分の1を占めます。
味噌もキノコも、生産量だけでなく、人口当たりの消費量も長野県が全国第1位です。
中でもキノコの消費量は、全国平均の1.4倍、最も消費の少ない沖縄県の2.5倍近くとなっています。ここでも長野県は地産地消を実現できているのです。
なぜ味噌とキノコが身体によいかといえば、ポリアミンと呼ばれる物質を豊富に含むからです。このポリアミンは健康によく、特に老化防止に効果がある事が、最近、あきらかになっています。
こうした「長野モデル」の特徴から学べるものは多いのですが、一番大事なのは、吉澤先生が説いて回った「自分で自分の健康を守る意識を持つ」、つまりひとりひとりが健康に対して、自主的に取り組むことです。
病気になってから病気を治すのではなく、そもそも病気にかからないための生活について、日ごろから気を配る、これに尽きるのかもしれません。
古川哲史(ふるかわ・てつし)
医学博士・東京医科歯科大学副学長
1957(昭和32)年、東京都生まれ。医学博士。1989年東京医科歯科大学大学院医学研究科博士課程修了。同大学副学長。著書に『血圧と心臓が気になる人のための本』『心房細動のすべて 脳梗塞、認知症、心不全を招かないための12章』『心臓によい運動、悪い運動』(いずれも新潮新書)などがある。