最新記事

感染

新型コロナ、物の表面を触って感染のリスクは低いことが明らかに 米調査

2021年2月9日(火)17時50分
松丸さとみ

「まずは換気や空気清浄。余力があれば消毒を」

新型コロナのパンデミックが始まり、ここ1年で多くの研究が発表されてきた。その中には、「ウイルスは物の表面で何日間感染力を維持するか」といったものも多かった。しかしラトガース・ニュージャージー医科大学のエマニュエル・ゴールドマン博士は科学誌ネイチャー(電子版)に対し、こうした研究はあまり気にしない方がいいと話す。というのも、大量のウイルスを使うなど、現実社会とはかなり異なる環境で実験が行われているからだ。

ネイチャーによると、同様に考える科学者は少なくない。これまで複数の研究で、感染の主な原因は、飛沫やエアロゾルに含まれるウイルスを吸い込むことであると示されている。

しかし気温が下がる冬季は、換気の改善よりも物の表面の消毒に取り組みやすいことや、消費者が消毒を期待するようになっているため、政府や企業、そして個人のレベルでも、相変わらず消毒に多くの時間と資金をつぎ込んでいるのだという。

ネイチャーによると、グローバル市場での消毒剤の売り上げは、前年比30%以上の増加となる45億ドル(4740億円)に達した。米ニューヨークの公共交通を管轄するニューヨーク州都市交通局は、消毒などを含む新型コロナ対応で昨年、4億8400万ドル(約510億円)をつぎ込んだ。

ゴールドマン博士は、感染が始まった当初は感染予防として手袋をはめていたが、現在は物の表面を介しての感染リスクは低いと判断し、手袋を使うのをやめたという。ただし、「パンデミックであろうがなかろうが、身を守る方法の一つは手を洗うこと」だと話す。

バージニア工科大学のリンゼイ・マー博士もネイチャーに対し、物の表面を介しての感染はないとは言えないため、「手洗いは絶対に必要」と話す。しかし物の表面の消毒よりも大事なのは、換気システムの改善や空気清浄機を導入することだと述べる。まずは空気に気を配り、「それでも余力があれば、頻繁に触れる場所を消毒する」という優先順位にするべきだと助言している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中