最新記事

韓国

韓国と中国、「キムチ論争」勃発

2021年2月5日(金)16時30分
佐々木和義

韓国のキムチ論争は欧米に広がった

同11月30日、英BBCが「中国が韓国の伝統食品であるキムチの製造法を国際的に認められたという『誤報(False report)』に韓国が反論に出た」と報道。

ハリー・ハリス駐韓米国大使が韓国の料理研究家イ・ヘジョンさんと行なったキムチを漬ける体験が米国非営利機構「アジアソサエティーコリア」のSNSで中継され、ハリス大使が「キムチは世界に広く知られた食べ物」と紹介すると、イさんは「キムチは本当に韓国のもの」とし、韓国のキムチの歴史などを説明、大使は「キムチよりも韓国らしいものはない」と話しを合わせた。

また、韓国誠信女子大学の徐敬徳(ソ・ギョンドク)教授が米ニューヨーク・タイムズに「韓国のキムチ、世界の人のためのもの」というタイトルで広告を掲載。「キムチの漬け込み文化は2013年国連教育科学文化機関(ユネスコ)人類無形文化遺産に登録された。歴史的に数千年間、韓国の代表食文化として継承してきた」と説明した。

中国人女性ユーチューバー、リー・ズーチーさんがキムチを漬ける動画を掲載すると、韓国ネットユーザーが「キムチは韓国のもの」「一線を越えるな」など抗議するコメントを書き込んだ。

一方、大食い配信で531万人の登録者を抱える韓国人ユーチューバーHamzy(本名:ハム・ジヒョン)さんは、自身のユーチューブチャンネルにキムチは韓国の食べ物だと投稿。Hamzyさんを非難する中国のネットユーザーと、反論する韓国のネットユーザーによる「コメント戦争」が繰り広げられ、中国側所属事務所はHamzyさんとの契約を解除した。

Hamzyさんの炎上のキッカケになった動画


「文化的な自信が乏しい韓国の被害妄想」と中国共産党は主張

中国共産党の中央政治法律委員会は「韓国の『キムチ論争』は文化的な自信が乏しい韓国の被害妄想」と主張。

1月13日、張軍国連駐在中国大使が、エプロン姿でキムチを手にしている写真をSNSに投稿し、20日には中国外務省の華春瑩報道官が定例記者会見で、キムチ論争に関連して「両国間の感情を害してはならない」としながらも「私は食品問題分野の専門家ではないが、泡菜は一部の少数の数か国・地域にだけあるものではない。中国は塩漬けの発酵食品を泡菜と呼び、韓半島と中国の朝鮮族はキムチと呼んでいる」とキムチと泡菜を同一視する発言を行なった。

2020年の韓国のキムチの輸出は3万9千700トンで1億4451万ドル。一方、輸入は28万トンで1億5242万ドルだった。輸出は約半数が日本向けで、輸入はほとんどが中国産だ。

韓国の飲食店では、必ずといって良いほどお代わり自由のキムチが提供されるが、飲食店経営者にとってキムチの無料提供の負担は大きく、安価な中国産キムチの増加を後押ししている。

日本の剣道や桜、寿司などを韓国起源だと主張する韓国は、中国の黄河文明や易学、漢方などでも韓国起源説を唱えており、中国人の反感を買っている。韓国と中国のキムチ論争が終息する気配はない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、2.7万件減の19.1万件 3

ワールド

プーチン氏、インドを国賓訪問 モディ氏と貿易やエネ

ワールド

米代表団、来週インド訪問 通商巡り協議=インド政府

ワールド

イスラエル、レバノン南部を攻撃 ヒズボラ標的と主張
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 4
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 5
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 6
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 7
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 8
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 9
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 10
    白血病細胞だけを狙い撃ち、殺傷力は2万倍...常識破…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 9
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 10
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中