最新記事

仮想通貨

ビットコイン価格は「天井知らず」と説く諸理論

No Ceiling in Sight for Bitcoin Value, Analysts Say.

2021年2月18日(木)18時18分
スコット・リーブス

資産運用には「よりバカ理論」というセオリーがある。賢いトレーダーは過度な高値と知りつつ、株を買う。「よりバカな人」がさらに高値ですぐに買ってくれるからだ。バブル崩壊で大損するのは、この「よりバカな人」たちである。

だがビットコインにはおそらくこのセオリーは当てはまらない。長いスパンで見れば価格は上昇し続けると考え、大半の投資家が保有し続けるからだ。インフレ・リスクに対するヘッジとして、ビットコインに投資する人もいる。

ただし、ビットコイン相場も右肩上がりの直線を描くわけではない。小幅な下落はもちろん、値崩れのような事態も起きるだろうと、スミスは言う。

アメリカでは多くの人が投資として住宅を購入する。家賃収入をローンの支払いに充てながら、将来的に値上がりしたら売却し、より大きな住宅を購入して、そこに住もうと考えているのだ。

スミスによると、最近ではこうした不動産投資に代わるものとして、将来的な資産形成のためにビットコインを購入する人たちがいる。この手の投資も価格押し上げの要因になっているようだ。

「住宅が不足することはないが、ビットコインは将来的に希少価値が生まれる。あまり楽観的なことを言うのも憚られるが、(ビットコイン投資では)ある種のパラダイム転換が起きていると思う。それがビットコイン購入に人々を駆り立てる大きな要因だろう」

GAFAに対抗する手段

米金融大手ゴールドマン・サックスのアナリストは、ビットコインは価格変動が激しすぎて、既存通貨のような交換手段にはならないと警告している。

だがビットコインの価格を押し上げているのは、値上がり期待だけではないと、スミスは言う。

グーグルやフェイスブックその他のプラットフォーマーは、無料でサービスを提供しているが、その見返りとして、ユーザーの個人情報を集め、ユーザーの好みや関心に合った広告を打って莫大な広告収入を稼いでいる。所得から教育レベル、住所まで、GAFAが入手する個人情報は多岐にわたる。

こうしたなか、自分の個人データを自己管理したいという「データ主権」意識が高まりつつある。さらに、それと時期を同じくして、コロナ禍による経済対策で政府支出が膨れ上がり、将来のインフレ懸念が高まったことがビットコイン人気の背景にあると、スミスは指摘する。

「データ主権が議論されるようになり、人々が個人情報の管理を重視するようになったため、ビットコインがますます注目されるようになった。そこにたまたまコロナ禍が重なった」

ビットコインによる取引は、解読不能な暗号化で守られたブロックチェーン台帳に記載される。GAFAのビジネスモデルは通用せず、プライバシーを守れる交換手段として、今後ビットコインの利用が増える可能性がある、というのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

仏当局、ディープシークに質問へ プライバシー保護巡

ビジネス

ECB総裁、チェコ中銀の「外貨準備にビットコイン」

ビジネス

米マスターカード、第4四半期利益が予想上回る 年末

ワールド

米首都近郊の旅客機と軍ヘリの空中衝突、空域運用の課
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 3
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 4
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 5
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 10
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 7
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 8
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中