ビットコイン価格は「天井知らず」と説く諸理論
No Ceiling in Sight for Bitcoin Value, Analysts Say.
資産運用には「よりバカ理論」というセオリーがある。賢いトレーダーは過度な高値と知りつつ、株を買う。「よりバカな人」がさらに高値ですぐに買ってくれるからだ。バブル崩壊で大損するのは、この「よりバカな人」たちである。
だがビットコインにはおそらくこのセオリーは当てはまらない。長いスパンで見れば価格は上昇し続けると考え、大半の投資家が保有し続けるからだ。インフレ・リスクに対するヘッジとして、ビットコインに投資する人もいる。
ただし、ビットコイン相場も右肩上がりの直線を描くわけではない。小幅な下落はもちろん、値崩れのような事態も起きるだろうと、スミスは言う。
アメリカでは多くの人が投資として住宅を購入する。家賃収入をローンの支払いに充てながら、将来的に値上がりしたら売却し、より大きな住宅を購入して、そこに住もうと考えているのだ。
スミスによると、最近ではこうした不動産投資に代わるものとして、将来的な資産形成のためにビットコインを購入する人たちがいる。この手の投資も価格押し上げの要因になっているようだ。
「住宅が不足することはないが、ビットコインは将来的に希少価値が生まれる。あまり楽観的なことを言うのも憚られるが、(ビットコイン投資では)ある種のパラダイム転換が起きていると思う。それがビットコイン購入に人々を駆り立てる大きな要因だろう」
GAFAに対抗する手段
米金融大手ゴールドマン・サックスのアナリストは、ビットコインは価格変動が激しすぎて、既存通貨のような交換手段にはならないと警告している。
だがビットコインの価格を押し上げているのは、値上がり期待だけではないと、スミスは言う。
グーグルやフェイスブックその他のプラットフォーマーは、無料でサービスを提供しているが、その見返りとして、ユーザーの個人情報を集め、ユーザーの好みや関心に合った広告を打って莫大な広告収入を稼いでいる。所得から教育レベル、住所まで、GAFAが入手する個人情報は多岐にわたる。
こうしたなか、自分の個人データを自己管理したいという「データ主権」意識が高まりつつある。さらに、それと時期を同じくして、コロナ禍による経済対策で政府支出が膨れ上がり、将来のインフレ懸念が高まったことがビットコイン人気の背景にあると、スミスは指摘する。
「データ主権が議論されるようになり、人々が個人情報の管理を重視するようになったため、ビットコインがますます注目されるようになった。そこにたまたまコロナ禍が重なった」
ビットコインによる取引は、解読不能な暗号化で守られたブロックチェーン台帳に記載される。GAFAのビジネスモデルは通用せず、プライバシーを守れる交換手段として、今後ビットコインの利用が増える可能性がある、というのだ。