最新記事

動物

地上最凶の動物「ラーテル」の正体 あらゆる動物の急所食いちぎり去勢も?

2021年1月23日(土)17時25分
ジョン・ロイド(BBCプロデューサー)、 ジョン・ミッチンソン(作家、リサーチャー) *東洋経済オンラインからの転載

newsweek_20210121_182506.jpg

人間とチンパンジー、チンパンジーの頭の毛は人間のように長くは伸びない © angela n. - (CC BY 2.0)

人間の毛皮が消滅した理由はわかっていない

Q 人間とチンパンジー、どちらが毛深い?

どう見てもチンパンジー。

......だと思えるのだが、毛包(もうほう、毛穴)の数は同じだ。

チンパンジーのほうが毛深いように見えるが、実際は、人間とチンパンジーは体の表面に同じ数の毛包を持っている。その数は、およそ500万個。人間の頭皮にあるのは、そのうちの10万個だ。

われわれの体毛は、進化の過程で他の霊長類の体毛よりも細くて透明になっていった。同時に全身をおおっていた毛皮が消滅していったが、そのわけは誰にもわかっていない。

シラミを減らすためだったという説もあれば、170万年前に人類が森から出てサバンナに住むようになったときに、過度に体温が上昇しないように体毛を減らす必要があったという理論もある。

また、なぜわれわれの頭髪がこれほど長い間伸び続けるようにプログラムされているのかも、わかっていない。なにもしないで自然に任せておくと、人間の髪は腰の下まで伸び続ける。

人間以外の哺乳類を見ると、どの動物の(頭部の毛も含めて)毛皮もわれわれの体毛と同じように、ある程度の長さまで伸びると生え替わるようになっている(もっといえば、男性諸氏の中には、頭の毛はどんどんさみしくなるのに、どうして耳や鼻の穴からは─眉や背中にも─フサフサと生えてくる人がいるのか。こういったことも説明がついていない)。

体温調節が関係していた?

ある理論では、われわれの毛皮喪失は脳サイズの増加と結びつけられている。つまり脳が大きくなると、より多くの熱が発生するので、体温を適度に保つために人間は大量の汗をかくように進化したというのだ(たしかに、毛皮があったら汗をかくのは絶対に無理だ)。

というわけで、毛皮が減れば減るほど体温調節がうまくできるようになり、ますます脳は大きくなった。さらに、人類が直立歩行を始めると、毛を必要とする部分は頭だけになった。
要するに、肥大化する脳を太陽から守るための頭髪だけを残して、他の部分の毛皮は不要になったというのだ。

別の見解として、無毛は、それが進化の過程で起き始めると、雌雄選択または性淘汰によってさらに強化されたという考え方もある。つまり異性にとって魅力的であるために、進化の一形態として無毛になったというのだ。

かのチャールズ・ダーウィンも同じように考えた。そしてもしかすると、なぜ女性は男性より毛が少なくなり、また、なぜ滑らかで透明感のある肌が健康美の1つと見なされるようになったのかも、これで説明がつくかもしれない。

それでも、誰ひとりとして確信は持てていない。最近でも、古人類学者として第一線で活躍しているイアン・タターソルでさえ「体毛喪失の利点については多種多様な見方があるけれど、そのすべてが単なる仮定にすぎない」と述べている。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら
toyokeizai_logo200.jpg

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

英小売売上高、10月は前月比-0.7% 予算案発表

ビジネス

アングル:日本株は次の「起爆剤」8兆円の行方に関心

ビジネス

三菱UFJ銀、貸金庫担当の元行員が十数億円の顧客資

ワールド

中国、日本などをビザ免除対象に追加 11月30日か
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中