最新記事

宇宙

「三体」? 3つの恒星を持つ系外惑星が特定される

2021年1月18日(月)17時00分
松岡由希子

恒星「KOI-5A」を系外惑星「KOI-5Ab」が公転する想像図 Image: Caltech, NASA

<1800光年先のはくちょう座にある三重連星系『KOI-5』のうちの1つの星を公転する系外惑星「KOI-5Ab」が、検出から約10年を経て、ようやく特定された......>

2009年に打ち上げられたアメリカ航空宇宙局(NASA)の系外惑星探査機「ケプラー」は、2018年までの運用期間中に、系外惑星2394個、系外惑星候補2366個を検出している。

これらの系外惑星候補のうち、運用当初の2009年に検出された1800光年先のはくちょう座にある系外惑星「KOI-5Ab」が、検出から約10年を経て、ようやく特定された。

一連の研究成果は、2021年1月11日、アメリカ天文学会(AAS)の237回総会で発表されている。

多重連星系の特性についてはほとんど知られていない

NASA太陽系外惑星科学研究所(NExScI)の主任研究員デヴィッド・キアルディ博士らの研究チームは、ハワイのケック天文台、ジェミニ天文台、カリフォルニア州サンディエゴのパロマー天文台の観測データを用い、2014年までに「『KOI-5Ab』が三重連星系『KOI-5』のうちの1つの星を公転しているようだ」と示したが、これが本物であるかどうかは判断できなかった。

その後、2018年に打ち上げられたNASAのトランジット系外惑星探査衛星(TESS)が「KOI-5」を含むケプラーの観測領域の一部を観測。ケプラーと同様に、5日ごとに「KOI-5Ab」を検出した。

キアルディ博士は、観測データを見たときの自身について「『このターゲットを覚えている』と思った」と振り返る。そこで、研究チームは、これまでのすべてのデータを再分析し、ケプラーやTESSの観測データに加え、ケック天文台の観測データを用いて、「KOI-5Ab」が「KOI-5」に属する「KOI-5A」を公転する系外惑星であることを特定した。

「KOI-5」のような三重連星系を含め、多重連星系の惑星はこれまでにいくつも発見されているが、単独星に比べるとまだ極めて少ないため、多重連星系の特性についてはほとんど知られていない。

1844bbb.jpeg

Image: Caltech, NASA

どのような特性を持つのか、まだ多くの謎が残されている

「KOI-5Ab」は土星の60%の質量を有し、地球の7倍の大きさのガス惑星とみられ、5日の周期で主星である恒星「KOI-5A」を公転する。「KOI-5」は、「KOI-5A」のほか、「KOI-5B」、「KOI-5C」の恒星で構成される三重連星系だ。「KOI-5A」と「KOI-5B」は、どちらも太陽とほぼ同じ質量で、「KOI-5A」と「KOI-5B」は30年周期で互いの周囲を公転し、「KOI-5C」は400年周期で「KOI-5A」と「KOI-5B」の外側を公転する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米雇用、11月予想上回る+6.4万人・失業率4.6

ビジネス

ホンダがAstemoを子会社化、1523億円で日立

ビジネス

独ZEW景気期待指数、12月は45.8に上昇 予想

ワールド

トランプ氏がBBC提訴、議会襲撃前の演説編集巡り巨
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中